みなさんは、もう年賀状を投函したでしょうか。毎年、この時期になると年賀状についてあれこれ悩んだり、考える人も多いようです。デイリースポーツ紙に掲載され、読者から多くの反響があったパズル作家・河田智氏のコラムを再編集して掲載します。
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ボクは年賀状が嫌いです。なぜか。ボクの父は中学校の校長先生でした。毎年元旦には100枚以上の年賀状が届きます。母はその1枚1枚にケチをつけました。「裏も表もぜんぶ印刷とか、なんのありがたみもないわ。家族写真とかも最悪。とくに子供だけのアップなんか正気を疑う。可愛いとでも思ってるのかしら」。そのくせ、母にはいつも10枚以上の年賀状が届きます。自分は1枚も出していないのにです。
人徳と言うほかありません。ふむ、そういうものか、と子供心に思ったボクは、そういう年賀状だけは出すまいと誓いました。プリ〇トゴッコなど使うことなく、すべてに手描きのイラストも添え、渾身の年賀状を毎年何十枚も作成しました。それでもボクに届く年賀状は毎年数枚のみ。不人気というほかありません。
成人すると、なお意地になり、より手の込んだ肉筆年賀状を書きました。しかしリアクションはイマイチ。やがて力尽き、とうとう1枚も出さなくなりました。友人たちが結婚する歳になり、母の言う、正気を疑う年賀状がどんどん増えていったからです。
以来、ウン十年。けれど、世の人々も年賀状を出さなくなると、元来のヘソ曲がりの血がうずきます。しばらく会っていないあの人に、今年は何枚か書いてみようかな。返事を強要するほどの迫力イラストも添えて。もらった人、返事書けよな。