白磁器でボクサーブリーフを作ってしまった 下着メーカーと白磁作家の珍コラボが好評

仲谷 暢之 仲谷 暢之

昨今、男性のアンダーウェアのバリエーションも増えてきたが、とうとう振り切り過ぎた(?)パンツが登場した。ご覧の通り、白磁器のパンツ。とは言っても一般的に発売されたものではなく、実は男性アンダーウェアメーカー「TOOT」が、名古屋を中心に活躍する白磁作家・酒井崇全さんとコラボしたもの。

このパンツが好評で、続いてそれを模した白磁パンツホルダーが発売されると、50の予定数が販売開始と同時にわずか20分で完売という盛況ぶりで、いまだに再発売してほしいとの問い合わせが多いと言う。そこで、作家の酒井崇全さんに、白磁器パンツについてお話を聞いた。

——まずどういう経緯でコラボが決まったんですか?

酒井:僕自身、随分前から、メンズのアンダーウェアってダサいからどうにかならないもんかなぁ~と思っていたんですね。そんな時、彗星の如く現れたのがTOOTさん(当時はT-PLAYという会社名)で、創業当時から愛用してました。

 2019年の春夏のコレクションで、突起がいくつも付いたアンダーウェアが発表されたんです。それを見た時に、以前自分が発表した作品と相通じるものを感じたんです。で、昨年コロナ禍になって時間ができた時に、突起のあるアンダーウェアを思い出し、勝手にコラボ計画を実行して作品を作り、Instagramに載せたんです。

するとTOOTさんからメッセージが来まして。てっきりブランドイメージを損なうから削除してくれっていう依頼かと思ったんですが「ぜひ一緒に作り上げませんか?」という内容で…。そこから本当にコラボ計画がスタートしました。

——そもそも酒井さんが制作されている白磁器っていうのはどういうものなんですか?

酒井:石膏型にドロドロにした磁器土である泥漿を流し込んで作る「鋳込み」という技法が主な制作方法です。一般的にはインダストリアルな分野で分業化されているのですが、これを僕は一貫して行い、少量生産でやっています。素材は上質な天草陶石で、その素材に余計な加飾はいらないという考えから白一色の白磁作品を制作しています。とはいえ、白はすべての色を含んでいると思っているので僕は密かに「White rainbow」って呼んでます。

——そんな白磁器をどうパンツに作り上げたんですか?

酒井:まずモデルさんが着装する白磁パンツ、お面、ネックレス、腕時計を制作しました。

 コロナ禍だったので打ち合せはすべてリモートで行ない、モデルさんにもお会いできず、結果いろいろな角度から撮った複数の画像と詳細な採寸データを元に白磁パンツを作りました。

 苦労したのは当然ですけど、ちゃんとTOOTさんのパンツに見えること、そして"もっこり"のボリュームは真剣に考えましたね(笑)。強調しすぎてしまうと必要以上に性的なイメージが強くなってパンツ全体に目がいかなくなっちゃいますし、かと言ってあまりボリュームがないのも魅力が削がれてしまいますから。そのさじ加減は試行錯誤しましたね。

 その後、実際のパンツが2枚入る白磁パンツホルダー制作をしたのですが、これも同様のことに加えて、強く意識したのがキュートなプリケツ感でした(笑)。これまでの作品にお尻をモチーフにしたシリーズがあったので、今回、そこは我ながらよくできたかなとは思います(笑)。

——難しかった点は? 

酒井:僕の扱う磁器土は、焼成で約2割縮んでしまうんです。つまり、実際のサイズより2割増しで成形しなきゃいけない。しかも、高温に晒されて窯の中で柔らかくなります。その時に重力で大きく曲がったり、歪んだりする。しかも冷却中に割れてしまうのも多い。

 だから着装した白磁パンツも、まず実際のモデルさんの2割増しのトルソーを作り、それを元に鋳込み型を制作し焼成しましたが。やはりいくつかは割れてしまい、結局1セットの白磁パンツを作るのに15セット制作しました。

——これから挑戦したい白磁器はありますか?

酒井:もちろんまたTOOTさんとのコラボはやりたいと思いつつ、いろいろな作り手さんや作家さんの現場を見ていると、その場で使われている道具が光って見えるんですよ。その道具のフォルムが凄くいいんです。そのアノニマスなデザインを自分の今まで作ってきたフォルムに取り入れた作品を考えています。

◇ ◇

白磁器パンツのインパクトの裏には作家の緻密な計算が隠されていたことがわかった。instagramの投稿からコラボを提案したアンダーウェアメーカーの遊び心も楽しい。再びのコラボを期待しつつ、さらに次はそれぞれどんなコラボを生み出すのか楽しみにしたい。

 酒井崇全ホームページ:http://www.sobrothers.com/

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