アイドル黄金時代の人気グラビアがよみがえった。1980年代のアイドル雑誌「Momoco」(学習研究社・当時)の名物巻頭企画「Momoco写真館」がデジタル写真集として復活し、今夏に第1弾『本田理沙デジタルMomoco写真館』が発売された。カメラ専門誌「CAPA」(ワン・パブリッシング)では昨年9月号の斉藤由貴を皮切りに、写真家・小澤忠恭氏(70)とのリバイバル企画をスタートさせ、当時のポジフィルム原版を最新デジタル技術でスキャニングして掲載。当時未掲載だった秘蔵カットを含む全60ページの写真集発売に踏み切った狙いを、編集部担当の福田祐一郎氏(49)に聞いた。
一緒に旅をする
昨年の夏。福田氏は神奈川・大磯に構える小澤氏の事務所で打ち合わせを行い、高校時代に愛読していた「Momoco写真館」の復活を企画した。
「小澤さんと決めたのは、単なるリバイバルにはしたくない、ということでした。週刊誌の復刻ものは雑誌からの複写が多いのですが、今回は小澤さんご自身がフィルムの原版をスキャンしてくださいました。当時未公開のカットを掲載することがありますし、モノクロページで小澤さんの写真に対する心構えのようなものを記事にしています。撮影テクニックだけではない、現代にも通用する、かなり深いことを語っていただいております」
1983~1991年まで続いた名物企画では、人気アイドルと2泊3日で、海外を含む各地で撮影が行われた。一緒に旅をするというコンセプトのもと、フィルムは毎回100本以上が使われたという。同誌の今年1月号では伊藤麻衣子(いとうまい子)が登場。瀬戸内海に浮かぶ漁船でたたずむ姿が印象的だ。
「女の子が寝そべっているカットや、景色に溶け込ませたもの、寄り引きの緩急がすごいなと思います。瀬戸内海に浮かぶ漁船に乗る伊藤さんを望遠レンズで捉えるものなど、実験的な撮影も行われていました。また、渡辺満里奈さんはかつて皇族も利用した逗子なぎさホテル、酒井法子さんは東京としまえんなど、今はもうない景色や時代性も楽しめると思います。現在でも同じような企画は写真集なら別ですが、雑誌ではもうどこも無理なのではないでしょうか」
雑誌業界に勢いがあり、元気だった頃の日本を物語る作品の数々。当時の「Momoco」では10数ページが割かれたが「CAPA」は7ページ。「もっとたくさんの作品を見せたかった。デジタルなら経費面のリスクも少ない」と再掲載から漏れたもの、未発表の作品を盛り込んでデジタル写真集を完成させた。被写体の各アイドルには片っ端から掲載許可を求めたという福田氏。大半は事務所との交渉だったが、印象深いやり取りもあった。
「島田奈美さんは現在音楽ライターとして活動されていますが、直接本人から『小澤さんお元気ですか』と連絡がきました。本田美奈子.さんは生前の事務所の社長さんが快諾してくれました。驚いたことは掲載時、どの方からも修整要請がほぼなかったことでした」
小澤氏だけでなく、被写体にとっても胸を張れる仕事だったのだろうか。雑誌での企画は年内をメドに終了。デジタル写真集の発売は1カ月に1冊のペースで当面継続される。デジタル写真集第2弾は渡辺満里奈で8月27日に発売され、第3弾には本田美奈子.が予定されている。
◆リバイバル企画に登場したアイドル(撮影時期とロケ地)
斉藤由貴(1986年8月ハワイ)、後藤久美子(89年11月函館)、森尾由美(83年9月函館)、本田理沙(89年2月グアム)、伊藤麻衣子(84年2月尾道)、姫乃樹リカ(88年4月奈良)、本田美奈子.(85年6月香港)、松本典子(85年11月鎌倉)、渡辺満里奈(88年5月葉山)、生稲晃子(88年8月沖縄)、酒井法子(88年2月東京)、島田奈美(87年11月花巻)