声優の落合福嗣(33)が3代に及ぶ「落合家のガンダム愛」を明かした。11日に都内で開催された劇場アニメ『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』のトークイベントに参加。自身のガンダム愛のルーツ、2人の娘への思い、声優としてのプロ魂、プロ野球の大打者だった父・博満氏(67)からの〝名解説〟を語った。
「フクシくん」と異端者扱いされたのは遠い遠い過去の話だ。今や声優界の名門・青二プロに所属し、2019年には声優アワードで新人男優賞を受賞、『グラゼニ』『火ノ丸相撲』などでメーンキャラを演じる実力派となった。私生活では長女と次女、長男に恵まれ、一家の大黒柱となった。そして今年6月に公開された『閃光のハサウェイ』では、反地球連邦政府組織マフティーを率いる主人公ハサウェイ・ノアの同志レイモンド・ケイン役でガンダムシリーズへの初出演を果たした。
中学2年生時に『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』を鑑賞し、ガンダム愛に目覚めた。友人に薦められたVHSで「心がガチっとつかまれました。陸戦型や量産型が心に刺さりました」と言い「あんなに渋いガンダムは他にない、と思っています」と、今もその思いに変わりはない。『機動戦士ガンダム0080ポケットの中の戦争』もお気に入りで「僕はケンプファーが大好きなんですよ」と、ガンダムNT-1(アレックス)との交戦シーンを挙げた。「シンボルであるVアンテナが折れている状態でアレックスが出てくるのが子どもの時からカッコイイと思ったし、大人になって見てもカッコイイ。90ミリガトリング砲を撃つときに、最初は弾道が安定していて、撃ち続けることで腕が動いて乱れる演出がカッコイイです」と熱く語った。
7歳の長女のエピソードも披露した。3歳時にテレビ放映されていた『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』を視聴していた際「3歳の子どもが『いけ~、バルバトス~』って言うんですよ」と苦笑し、再び鑑賞した現在の様子を「長女が『懐かしい~』って言うんです。7歳になって見直したら敵をやっつけても泣くんですよ。成長したなって、うれしくなりました」と語った。5歳の次女は今になって「いけ~、バルバトス~」と口に出して鑑賞しているそうで、9月に2歳になる長男ともども、ガンダム愛を育んでいくことになりそうだ。
コロナ禍に見舞われた『閃光のハサウェイ』のアフレコでは、マフティー同志のエメラルダ・ズービン役の石川由依、イラム・マサム役の武内駿輔との3人で一緒になる機会はあったが、ハサウェイ役の小野賢章の演技に立ち会うことはなかった。「本当ならハサウェイやギギの芝居を見て、ああそういう風に考えてたんだという感動があったと思う」と残念がった。ただ、この状況を生かした役作りを行った。自宅でリハーサル用のVTRをチェックする際「ハサウェイが出てくるシーンは絶対に見ないと決めていました。なぜかというとハサウェイの心情やモノローグ、ギギとの関係性を、レイモンドは(作中では)見ていないんですよ。レイモンドが見ていないのに、僕が見た上での芝居になるのが嫌でした」と説明。「ハサウェイの心情を知らないまま芝居をできたことはすごく良かったと思います。子どもたちが横にいて『なんのやつ』『教えて』と言われても、僕は子ども達には『お仕事してるんだよ』と言っていました。僕のシーンではモビルスーツが出ていないので『お父さんがガンダムに出てる』とビックリしていましたね」と振り返った。
今作の見どころを「僕は指の芝居がすごく好きでした。モビルスーツ、キャラクターの手の表現、指の表現ですね」とした上で、ハサウェイがクレジットカードを見つめて物思いにふけり、眠り落ちてカードを落とすシーンを「彼は寝てる時だけはマフティーから解放されてるんじゃないかと思いました。ギギが怖いと指を絡めようとするけれど、ハサウェイは強く握らないので、彼の中で迷いがあるのかなとか感じました。最後にギギが抱きついた時、本来ならすっと抱きしめるシーンでも、手のひらの動きは躊躇していました。芝居はセリフや表情だけでなく、それ以上に指先がものを言うなと思いました」と感慨を抱いたという。
モビルスーツの動きではΞガンダム(クスィーガンダム)が扉を開けるシーンを挙げた。「よく見ると扉に、小指からかけているんです。小指からぐぐぐと力を入れて、意味があるのかなと思いました。僕だったら普通にガッとつかむ」と不思議に思った。ブルーレイを購入し、父の博満氏と鑑賞した際に小指のことを尋ねたところ「お前、その方が力が入るからだよ。バットは小指から握って、薬指にかけて力点を置く。ガチッと握ると手首が動かない。小指にだけ力を入れて、あとは優しく握ると力が入るし、手首が楽に動かせるようになる。だからガンダムも小指からいったんだろうな」と解説され、膝を打ったという。「Ξガンダムはバットを握らせたら遠くまで飛ばすのではないか。ビームサーベルがすぐに出せたのも小指から握ったからではと思うんです。本当に指の表現に注目していただけると、一層面白いんじゃないかと僕は思いました」と冗談混じりに熱く語った。
同作は興行収入20億円超えを果たし大ヒット中。ガンダムシリーズ歴代最高の『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』(1982年)の興収23億円を射程範囲に捉えている。「リーダーのハサウェイが、皆さんのおかげで20億の男になりました。今度は23億の男にさせていただけないでしょうか。何とぞよろしくお願いします」と呼び掛けていた。