五輪開会式バッハ会長のスピーチは、なぜ長く感じたのか?弁論全国大会3度優勝者が分析

松田 和城 松田 和城

 先月23日に行われた五輪開会式。選手入場の際、日本を代表するゲーム音楽が流れたことやドローンを使用した演出が話題になった一方で、国際オリンピック委員会(IOC)バッハ会長の13分にも及ぶスピーチの長さや内容を疑問視する意見が相次いだ。このことで、スピーチライターの視点から聞き手が長く感じた原因を具体的に言語化し、分析したツイートが4000リツイートを超え、注目を集めている。同ツイートを投稿したスピーチライター・千葉佳織氏が、よろず~ニュースの取材に応じた。

 ツイートの画像4枚では、バッハ会長のスピーチ文が中央に配置され、長く感じた要因となる計7つのポイントが左右に添えられている。

  「感謝の言葉が多すぎたため聴衆が飽きた」「橋本聖子会長の直前のスピーチと『内容かぶり』があった」など、丁寧な解説付きで記載されている。

 一番の問題点を問うと、同氏は、これらの要素を総合的にまとめ「原稿構成やモチーフに意味が無かった」と答えた。「13分という長さで最初から語る気があれば、バッハさんにしか話せないようなエピソードを入れつつ、人の共感を得るような工夫が必要なんです。そういったものがないのは、原稿構成や言葉それぞれの目的不足だと思いますね」と説明した。

 千葉氏は過去、弁論大会で3度の優勝経験がある実力者。現在はスピーチ学校「GOOD SPEAK」の代表を務め、企業・政治選挙・教育現場にスピーチトレーニングプログラムを提供している。同氏はスピーチでは、聴衆の集中力を続かせるような“配慮”も必要だと話す。

 「スピーチ原稿って本来、聴いている人がどんな感情になるかというのをすごく計画するんですよ。なので『オリンピック始まりました。楽しみですね』っていうニュアンスの言葉だけじゃ飽きちゃうんですね。聴いている人の感情の揺れ動きとか、次にどんな言葉が来るんだろう?って言うワクワク感や引きつける力をさらに加えていく必要があったと思います」。バッハ会長のスピーチに改めて目を通すと、全体を通じて意外性もなく、予想できてしまうような一般的な話が続いている点が見受けられた。

 バッハ会長のスピーチから我々が学ぶことの出来る教訓とは何なのか。キーワードは“相手主体”だ。「相手ありきの原稿、スピーチが大切です。皆さん『緊張するのでとりあえず早口で話そう』とかついつい自分主体になりがちなんですよね。グッと聴衆側に意識を向けて、『たくさん伝えたことあるけど一個に絞ろう』とか。相手主体の視点が何より大切っていうことがこのスピーチから学べる教訓かなと思います」と言葉に力を込めた。

 反響も大きく、ツイッターでは幅広い層から、小説やゲーム実況など「他のことにも生かせる」と好意的な反応があった。「今回、批判をするっていうのは、やっていないんですよ。あくまで“分析をする”っていう形にこだわった理由もあって。何かを否定するのではなくそこからの学びをみんなが生かせるようにする必要があると思ったんです」と振り返った。

 同氏は、言葉や話し方の学習は、挑戦を後押しする”鍵”だと考えている。「話すっていう事は、先天的な能力ではなくて後天的に身につけることが出来るって事を社会にアピールしたいんです。それは自分自身がそうであったので、それが分かれば分かるほど、学ぶ人も増えて経済とか社会もより良くなると思うんですよね。今回の場合は、ツイートを見て『じゃあ自分も明日からこういう風に生かそう』と思ってもらうことが最終的なゴールですかね」と決意を口にした。

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