任天堂の人気ゲーム『大乱闘スマッシュブラザーズ(スマブラ)SP』を使用した非公式大会「篝火」が都内で26、27日の二日間にわたって開催された。384人の参加者が集い、二度の延期を乗り越え約3か月ぶりとなった同大会。運営側は「めちゃくちゃ楽しかった。オフ大会を開くたびに思いますが、こういった熱のこもった場が共有されるのは最高です」と充実した表情を見せた。
決勝では、スタッフを含めた多くの参加者が、配信台に上がった対戦を食い入るように見つめた。『ARMS』に登場するキャラクター・ミェンミェンをあやつるプロゲーマーのProtoBanham(プロトバナム)選手が優勝を決めると、会場は熱気の渦に巻き込まれた。
最後の攻撃がヒットし勝利が確定した瞬間、両手を掲げて喜びを表したProtoBanham選手。優勝インタビューでは「ようやくSP(『スマブラSP』)の大型大会で優勝できた。本当にうれしいです。今回のオフ大会でみなさんも熱量が上がったと思うので、もっと羽ばたいてもらえれば」と笑顔で話した。
『スマブラ』の非公式大会は様々な形で古くからおこなわれてきた。公式大会は頻度が少なく、有志の努力によってオフ大会が継続的に開催され、コミュニティが拡大してきた歴史的背景がある。2018年に発売された最新作『スマブラSP』ではコロナ禍以前において、700人以上の規模のものは1~2か月毎に定期的に開催。平日に各地で開かれる小規模なものを合わせると、1か月に全国合計で150件以上の大会が行われていた。
大会運営者2人に話を聞くと、「スマブラの非公式大会って賞金とか、景品とかないんです。みんな物的に豊かになろうとしていない。集まっている人たちは、試合で勝ったり観戦をすることに『スマブラ』という競技に対する文化的価値を見いだし、互いに共有しているんです」と語った。
同大会は参加者384人に対して、スタッフはボランティアの約20人。「参加者の10%は欲しい」と少し顔を曇らせ人手不足は否めない模様。1日目の会場では、予選開始の1時間半前から設営が行われた。机が足りないなど想定外のトラブルの対応に追われるスタッフの姿も見受けられた。
また、二度の延期を経ての開催にともない「会場を確保することも大変ですね。コロナ禍ということもあって、大きいところはワクチン接種の会場となっていて埋まっていることもあります」と振り返った。
大会で生まれた黒字は、機材の購入や大会運営費など、団体の活動に充てられる。しかし、感染症対策も含め支出額が大きくなっているにも関わらず、参加者を絞っているため収入額が減少し、前回大会の収支はマイナス7万円だった。「人数制限で収入が半分に減っているのが一番大変ですね」と明かした。
このような苦労が絶えない中でも、ボランティアとして大会の運営に携わるモチベーションは何なのか。「いい意味で悪ふざけベースでやっています。こういった大会をきっかけに自分の持つ技術を使って何かおもしろいことをやる。スタッフの自己表現といいますか。それによって楽しんでいる姿を見ることでやってよかったなって思います」と冗談めかして笑いつつ話した。
同大会のYouTube配信の再生回数は90万(28日現在)を超え、ツイッターのフォロワー数も大会を通じて約4000人の増加。「こんなに盛り上がると思わなかった」と手ごたえを感じている。『スマブラ』の大型大会は、2021年3月27日に開催された「篝火#3」以来約三か月ぶり。コロナ以前は、月に1回のペースで開催されていた。今後は情勢を鑑みる形にはなるが、開催の頻度を上げていく予定だ。「今回からプレスリリースの掲載をお願いしたんです。大会を広げていくためにも、広報的な部分を頑張っていきたいと思っています。選手の方にも、より多くの人の目に触れるよう自分から宣伝してもらえるとありがたいですね」と言葉に力を込めた。
次回大会「篝火#5」が7月31日に、東京産業貿易センター浜松町館で開催されることも発表。今回と同規模の384人による戦いが行われる予定だ。