生活改善アプリ「継続する技術」や「集中」などをリリースし、累計ダウンロード数200万超を記録したbondavi株式会社(本社・神奈川県横浜市)。同社のアプリは全て無料で、広告もないことが特長だ。「ずっと赤字」のアプリ開発費を補填していた収益事業を自ら手放し、〝貧乏暮らし〟でもアプリ制作に専念する熱意を社長の戸田大介氏が語った。
bondaviは広告代理店でデータ分析の仕事をしていた戸田氏が約3年前に立ち上げたベンチャー企業。戸田氏は会社員時代から個人でアプリを公開しており「(アプリ開発が)あまりにも好きすぎて、一念発起して会社辞めますと」と、好きなことを本業にすべく起業した。
同社のアプリは無料で利用でき、広告がない。「自分がユーザーだったら広告がない方がいいなと思って。やはり自分が使いたいアプリを作るっていうのが一番最初にある」とこだわりを貫くが、広告の収入がなくアプリ事業は「ずっと赤字」の状態。収益源として、〝課金しなくても問題ない〟オプション機能を実装したものの、売り上げは振るわない。
「主力事業(アプリ開発)がずっと赤字」の状態を補填するため、他企業からアプリデザインの仕事を請け負っていたが、「最近、(売り上げの)大半を占めるクライアントの仕事を辞めてこっちに専念しようみたいなことを言ってしまって(笑)」。BtoCのモバイルアプリ開発に集中することを決断した。「あとはこの資金が尽きる前に黒字化しないと会社が潰れるっていう状態」と明かした。
戸田氏はBtoCのアプリに専念することに「収入が劇的に減るので正直不安はあった」といい、何カ月で資金が尽きるか、どのような生活が待っているかを想定。「そうしたら、貧乏暮らしをすることでアプリ開発の仕事をずっとできるんだったらどちらがいいだろうと思って。私は裕福でなくてもこの仕事が毎日たくさん時間取れてできたら幸せかなと思いました」と決断の理由を話した。
原動力はユーザーの反応だ。「人生が前向きになりましたみたいなことを言ってくださる方が結構いらっしゃって、それが本当に全てですね。人の役に立てているかもしれないという実感があって、それが本当にうれしい」と笑顔を見せた。
現在、社員は戸田氏を含め3名。戸田氏は「資金に余裕ができても大企業にしたいとは思っていない」とも語る。人が増えると意見の衝突も増える。異なる意見の中間を取ることで「誰にとっても100%じゃないものができるみたいなことってあると思うんです」と続けた。
「それは私が会社員時代とか、BtoBの仕事で日々見ていること。そういったものを作れば作るほど、bondaviがどんどん薄くなっていって、他と同じものになってしまうのかなと思っていて。それであれば、他のものと絶対違って、誰かは嫌いかもしれないけど誰かにとってはすごく価値があるものを今後も作り続けていけたら」
新公開された「人間関係」は戸田氏が感じた人付き合いの課題から着想を得た、知人の誕生日や記念日を登録できるアプリだ。前職を辞めて以来、人と会う機会が減り「どんどん友達がいなくなっていく日々」だったという。「何もない日に『飲みに行こうよ』とか言えないんですよ(笑)。でも誕生日とかだったら自然に祝えるんじゃないかなと」と、コミュニケーションのきっかけを作るアプリが誕生した。
今後はアプリストアのレビューや利用者インタビューをもとに、新機能の追加も予定。データ分析や理論に基づいて「ユーザーの生活の中に明確な影響を起こしていく」アプリを作り続ける。