今年2月24日のサービス開始から、わずか2カ月弱で500万ダウンロードを突破するという大ヒットを記録している、スマートフォン向けゲームアプリ「ウマ娘 プリティーダービー」。登場する〝ウマ〟はすべて美少女キャラクターになっており、従来の競馬ファンとは異なる層を中心に拡散。その「ウマ娘」が、いまや過去の名馬たちの〝救世主〟となっている。
引退した競走馬たちの「第2の馬生」を支える認定NPO法人「引退馬協会」は4月16日、同協会が所有する引退馬・ナイスネイチャ号の誕生日を記念し、寄付金を募る「バースデードネーション」を開始。当初の目標額は200万円だったが、初日に軽々と突破した。300万円に引き上げたが、これも初日に突破。22日現在で支援者は1万人超、寄付総額は2400万円超という驚異的な数字をたたき出している。
ナイスネイチャは1990年デビューの競走馬で、高松宮杯(当時G2)など重賞を4勝。G1制覇には手が届かなかったが、有馬記念では91~93年で連続3着に入り、希代の〝ブロンズコレクター〟と称されるなど、G1馬に劣らぬ人気を誇った。また、JRA重賞勝利馬として最長寿牡馬にもなっており、まさに「無事是名馬」を地で行く存在だ。
「3」着続きのナイスネイチャが、令和「3」年に「33」歳の誕生日を迎えるという、タイミングも絶妙だった今回のドネーション。だが、それ以上に大きいのが「ウマ娘」の存在だ。ナイスネイチャももちろん、ゲームに登場する。同協会代表理事の沼田恭子さんは、よろず~ニュースの取材に応じ「『ウマ娘』ファンの方のご協力とナイスネイチャの人気は、大変大きいと思います」と回答した。
「ウマ娘」がリリースされた直後から、ゲーム内に登場する過去の名馬たちへの関心が急激に高まった。沼田さんは「3月あたりから、協会へのお問い合わせや入会も増えてきています。グッズの売り上げも例年にないスピードで伸びています」と説明。「また、SNSを通して引退馬に寄付できることを初めて知り、競馬ファンの方からもご寄付やメッセージをいただきました」と明かした。
ナイスネイチャのバースデードネーションは今年が5回目で、昨年は177万3900円の寄付が集まった。沼田さんも「それでもすごいと思っていましたが、今年のこの数字は、ただただもう驚くばかりです」と驚愕。「当協会も、寄付をいただいた皆さまのご期待に沿えるよう、改めて気持ちを新たにしております」とした。
華やかな世界に生きる競走馬も、引退後に注目を浴び続けるのはほんの一握り、競争生活よりもはるかに長い時間を、現役時代をリアルタイムでは知らないファンが支えるという、思わぬ図式ができあがりつつある。同協会はナイスネイチャなど95頭の引退馬を管理しており、沼田さんは「どの引退馬にも生きられる場所、活かされることがあると信じて活動しております。一頭一頭を丁寧に、最後のステージまで繋げていきます」と活動方針を語った。