アニメーター志望者にはチャンス?国内アニメ業界の深刻な人材不足 サブスク配信、中国への流出

ゆきほ ゆきほ

市場規模が2兆5000億円を越え、今後の日本経済を支える産業として期待されるアニメ業界。しかし現場ではアニメーターの人材不足が深刻になっている。原因の1つはサブスクリプション配信、1クールで終わる作品などコンテンツの増加だ。もう1つは、中国への人材流出。海外へのコンテンツ流出規制が厳しくなり買い控えが始まったが、中国国内のアニメ人気は高まる一方。テンセントビデオなど大手動画配信会社は豊富な資金源で日本のアニメーターや制作会社を抱え込み、質の高いコンテンツを量産しているのだ。

しかし人材不足であるということは、アニメーターに就ける確率も上がっているということ。アニメ業界とは働く者にとってどのような環境なのだろうか?某大手アニメーション制作会社の元アニメーター、Uさんに話を聞いた。

――アニメーターになったきっかけは?

U:映画が好きで大学は映像科に所属していましたが、将来的には漠然を絵を描く仕事ができればと思っていました。ゼミでアニメーターの恩師と出会い、人物の歩き方や自然現象の動きを学びました。その先生にご紹介いただき、制作会社の入社試験を受けたんです。

――給料が安く労働時間も長いと言われていますが…。

U:徹夜や会社で雑魚寝もありましたが、会社所属で給料制だったので、過酷という程ではなかったですね。初任給は安かったですが年1割の昇給も約束されてたので、長い目でみるとお金の心配は無かったです。フリーランスは1枚いくらの出来高制ですが、替えの利かないクオリティの仕事ができるようになれば社員より待遇もお給料も優遇されると聞きました。

――実際働いてみてどうでしたか?

U:勿論大変でしたが、トータルでは楽しかったです。完成品を観た瞬間、エンドロールに自分の名前を発見した時、ファンの方々に感想をいただいた時には感動し、やりがいを感じました。憧れのアニメーターの方々と知り合えたりレアなグッズをもらえたのもアニメファンとしては最高の職場でした(笑)。

――具体的にどんな絵が描ければいいのでしょうか?

U:入社試験は昔も今もほとんど変わらず、シンプルな動きを描く課題が多いです。有名なのはNHKの朝ドラ「なつぞら」でもありましたが、鍬を振り上げて降ろす動きですね。振り上げた時のタメがしっかり描けているかがミソです。プールの飛び込み台から飛び込む動きも代表的ですね。他の受験者と差を付けたいなら、例えばプールを覗きブルブル震えながら飛び込み台から降りるシーンを描いた伝説のアニメーターがいたという逸話もあります。しかし入社後いざ仕事となると、決められたルールに則って描かなければいけません。特定のキャラクターや作品が好きであったり、自由にのびのび描きたいという方は窮屈に感じるかもしれません。

――アニメーターを目指している方に一言。

U:どんな仕事も大変なものです。どうせ大変なら自分の好きなことを仕事にするのもアリじゃないでしょうか。CGの台頭が心配されていますが、基本的な動きはアニメーターでないと描き切れません。将来的にもCGと手書きが上手く共存していくと予想しています。ネットや本などに情報は溢れています。沢山情報収集して勉強してください!

◇ ◇

一部で労働環境向上の必要がある企業があることも事実だが、自分の描いた絵が動き、喋り、物語となり多くの人の心を動かすというのはそれを志望する人にとって他に替えがたい価値がある。

現在、日本動画協会はアニメーターという職業の周知や新人育成のためホームページ上で「アニメーターの課題集-動きの法則を理解するための第一歩-」を無料配布中(https://aja.gr.jp/)。

人間や立体の動きを分かりやすく解説する作画ドリルになっているのでご興味のある方はぜひチェックしていただきたい。

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