近年は「リビング学習が良い」と言われることが多いが、自分の子どもに合っているのかと悩む家庭は少なくない。筆者の家では3人の子ども全員が塾を利用しておらず、生活も勉強もすべて自宅で完結しているため、快適に学習できる環境づくりに意識的に取り組んできた。
家族構成は、中学受験に取り組む小学5年生の次男、中学3年生の長女、高校1年生の長男。通う学校が公立小学校・公立中学校・私立高校と異なるため、定期試験や小テストの頻度や必要な勉強量も三者三様で、学習状況は日々大きく違っている。
そんな中、勉強の環境づくりで大切にしているのは「選べること」だ。勉強場所を固定せず、気分や勉強内容に応じて自由に選べるよう、スタディスペース(ダイニング横の壁一体型の机)、ダイニングテーブル、リビングのローテーブル、個室の4つを用意。それぞれを自由に使えるようにしているが、結果的に子どもごとに好みが分かれている。
ダイニングテーブル横のスタディスペース。真ん中が次男の席、通信教材の動画を視聴するときは、左端のPC席に移動する。
次男には個室があるものの、本人が「いらない」と言うため、勉強机は置いていない。そのため、中学受験の勉強も学校の宿題もほぼすべてスタディスペースで取り組んでいる。スタディスペースはダイニングとキッチンに隣接しており生活音がするが、本人はあまり気にならないようだ。
長女も基本的にはスタディスペースで勉強している。通信教材のタブレット学習ではワイヤレスイヤホンを使うが、兄弟がゲームをしているときや英語のリスニングの際には個室に移動する。ただし常に個室にこもるわけではなく、状況に応じて2つの場所を使い分けている。
長男は主にスタディスペース横のダイニングテーブルで勉強している。小学校まではスタディスペースを利用していたが、中学に入ってからはテキストやプリント、Chromebookを一度に広げるようになり、手狭になったことから自然にダイニングへ移った。
また、長男も長女と同様に個室とダイニングを使い分けている。次男がアニメを見ていてもダイニングで勉強していることがあり、必ずしも静かな環境を求めて個室に移るわけではないようだ。使い分けの基準は不明だが、来年からは大学受験に向けた勉強が本格化するため、徐々に個室で過ごす時間が増えていくだろう。
まとめると、基本的には3人ともリビング学習(実際にはダイニング中心)がメインであり、必要に応じて長男と長女のみ個室に移動している。筆者としては特定の場所を強制するつもりはなく、子どもたちが自分で選べるように任せている。次男の個室についても、小6からは勉強机を置く予定だが、それも「必要なら使ってね」という程度であり、自由に選んでもらえれば十分だ。
リビング学習か個室学習かという議論はしばしば目にするが、筆者が大切にしているのは、どちらかを選ぶことではなく、複数の場所を用意し子どもが自由に選べる環境を整えることである。兄弟姉妹がいる場合は特に、状況に応じて場所を使い分けられることが、メンタル面にも学習効率にも良い影響を与えると考えている。
必ずしも「机と椅子」が揃っている必要はないと思う。ダイニングの一角や座布団を敷いた場所でも十分だし、子どもによっては寝転がって勉強することもあるだろう。大事なのは気分転換をしながら勉強を継続できることであり、複数の勉強場所を用意するのはそのための手段に過ぎない。
また、スペースの確保が難しい場合には、ノイズキャンセリングイヤホンや視界を遮る仕切りなど、道具で補うこともできる。教材があり、子どもがいて、必要なら親がそばにいる。それだけで、どこだって勉強空間になり得るのではないだろうか。
<プロフィール>
野田 茜
2男1女のママライター。2022年、高1長男が完全塾なしで中学受験をし、偏差値(四谷大塚)60半ばの中高一貫校へ進学。現在、小5次男が通信教材を利用し自宅学習で中学受験に挑戦中。自身は中学受験未経験で大学まで公立育ち。中学受験の問題の難易度にまったく歯が立たず、逆に子どもに教えられる。「ママ、教えてあげよっか?分かる?」と次男に心配される日々。