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離婚した元夫から「養育費2000万円を一括で振り込むよ」…子どものための“大金”に贈与税?税理士が解説

マネ活

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夫との協議離婚が成立したAさんは、小学生の子どもの将来を案じていた。すると元夫から「子どものために、養育費2000万円を一括で君の口座に振り込むよ」と提案があった。Aさんは「これで安心だ」と感謝して受け取ったものの、その数年後に税務署から贈与税の申告漏れを指摘する通知が届くのだった。

毎月の養育費は非課税であるにもかかわらず、一括払いだと贈与税の対象になるのだろうか。正木税理士事務所の正木由紀さんに話を聞いた。

ー毎月の養育費は非課税なのに、一括払いは贈与税の対象になるのですか

大原則として、親が子を扶養するのは義務であり、そのために支払われる養育費は贈与にはあたりません。そのため、毎月定額で支払われるような通常の養育費には、贈与税はかからないのです。

問題となるのは「一括払い」という点です。税務上、養育費が非課税とされるのは「子どもの生活や教育のために、その都度必要とされる費用」という考え方が基本です。将来の分まで含めた多額の金銭を一括で受け取ると、「その都度必要」という範囲を大きく超えてしまい、「財産の贈与」とみなされる可能性があります。

また、受け取った養育費をすぐに生活費や教育費に使わず、長期間にわたって預貯金にしていたり、株式や不動産の購入に充てたりした場合も、「本来の目的以外での使用」とみなされ、課税対象となるかもしれません。

ー「教育資金の一括贈与の非課税措置」は養育費には適用できますか

「教育資金の一括贈与の非課税措置」という制度は、祖父母や親が、30歳未満の子や孫のために教育資金を一括で贈与した場合、1500万円まで贈与税が非課税になるというものです。

この制度を離婚時の養育費支払いに応用することは、不可能ではありません。しかし、そのためには、単にお金を振り込むだけでは不十分です。支払う側(元夫)が信託銀行などと「教育資金贈与信託」の契約を結び、その信託口座を通じて教育資金を管理・支払いするといった手続きが必要になります。また教育目的での使用を証明する領収書の提出が求められるなど、細かな条件を満たさなければなりません。

ー贈与税を回避しつつ、養育費を確保するために有効な方法はありますか

将来の支払いが滞る不安を解消しつつ、贈与税のリスクも避けたい場合は、信託銀行などが提供する「養育費信託」を利用すると良いでしょう。支払う側(元夫)が将来の養育費総額を信託銀行に預け、信託銀行が毎月、受け取る側(元妻や子)に定額を支払う仕組みです。この方法であれば、お金は直接元妻に渡らず、信託契約に基づいて子どものために管理・運用されるため、贈与税の対象とはなりません。

ーすでに一括で受け取ってしまい、税務署から指摘された場合はどうすればよいですか

税務署から通知が届いた場合、絶対に放置してはいけません。まずは通知の内容を正確に把握し、速やかに修正申告、または期限後申告と納税が必要です。

養育費として受け取った金銭であり、実際に子どものために使ったという事実があるのであれば、その旨を証明できる資料(学費の領収書など)を揃えて、税務署や税理士に相談しましょう。

◆正木由紀(まさき・ゆき)/税理士 10年以上の税理士事務所勤務を経て令和5年1月に独立。これまで数多くの法人・個人の税務を担当。現在は、社労士や司法書士ともチームを組み、「クライアントの生活をより充実したものに」をモットーに活動している。私生活では2児の母として子育てに奮闘中。

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