宝塚歌劇団花組「エリザベート」が兵庫・宝塚大劇場で上演されている。今年は日本初演30周年で、宝塚では11度目の上演となる。
大人気公演のため実際に劇場に足を運ぶとなるとなかなか難しいが、映像で楽しむことができる。11月22日宝塚大劇場公演の千秋楽は、全国の映画館でのライブ中継とPCなどで使用できるライブ配信(Rakuten TVm、U-NEXT)が、さらに2027年1月27日の東京宝塚劇場公演は、公演映像を手元の端末でカメラアングルを切り替えて自由に楽しむことができるライブマルチアングル配信(TAKARAZUKA SQUARE【タカスク】)される。スマートフォン、タブレットなど好きなデバイスで、舞台全景映像と出演者にフォーカスした映像の合計3つの視点の好きなカメラを選択しながら、リアルタイムで公演が楽しめる。
主人公の黄泉の帝王トート(死)を演じるのは、トップスターの永久輝せあ。少女だったエリザベートが死の淵に立ったとき、その瞳の中に一瞬にして惹かれる魂を感じ取り、恋に落ちる様は非常にわかりやすく、死が人間を愛することに説得力を持たせた。その後もエリザベートに拒絶される度に一瞬、表情をゆがめるなど死でありながら人間味を見せ、それでもすぐさま笑みを浮かべる様子は、まさに黄泉の帝王の余裕を感じさせた。またエリザベートと同じ魂の香りを持つ皇太子ルドルフへには、終始余裕を感じさせる。ルドルフは常にトートの手のひらにあり、エリザベートとの対比を描いた。
タイトルロールのエリザベートを演じるは、トップ娘役の星空美咲。歴代でも歌唱力は抜群。皇后として責任の重さを覚悟しないままに、ハンサムな皇帝フランツへの恋に恋して、ロポーズに諾する乙女の可憐さ、自由への渇望と力強さを見事に演じた。ハンガリーの戴冠式後に、自ら王冠を外しトートと掛け合う様は圧巻。
エリザベートの夫、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフは聖乃あすか。トップを最も近い場所で支える男役としては、屈指の難役。若くして帝位に就き、周囲の国との争いや支配する国の反発など悩みは多いが、それを分かち合うべき皇后は自由を求め、母親は支配的。息子とは政治的スタンスが対立し、悲劇へと突き進む。聖乃はそのノーブルな美しさで、「若くてハンサムな皇帝」を納得させる。皇帝としての品位を失わず、妻を愛しているが、同時に皇帝としての重責もあり、頭では理解していながらも互いに寄り添いきれない悲しみを抑えた気品あふれる演技で、皇帝という立場をよく表現している。
そんな皇帝と対照的なのが、狂言回し的なルキーニ。星組から花組に組替えになって大劇場2作目の極美慎。星組で培ったダイナミックな熱さが役にはピッタリで、歌唱力も安定してきた。客席も巻き込み、世界観を構築するイタリア人らしい明るさと華やかさ、トートからナイフを受け取ってからの狂気を感じさせる演技の対比が絶妙。
皇太子ルドルフは侑輝大弥と希波らいとのWキャスト。持ち味が対照的で、繊細な役作りの侑輝と、国家を憂う青年の希波はそれぞれの魅力を遺憾なく発揮していた。
花組は主な配役のほとんどが歌唱力があり、純粋にお芝居としてエリザベートの世界に入り込める。表情や動きなど、ダイレクトに伝わってくる。互いの立場や思いを理解しながらも根本的なとこで交わることのできない夫婦、嫁と姑問題など、世界共通の普遍的な問題も盛り込み、初演から30年経っても決して色あせることはない。
宝塚大劇場は11月22日、東京宝塚劇場12月19日~2027年2月7日。