アニメ映画には大人が楽しめる作品も多く、映画館では成人と幼児が共存する現象が生じる。作品を鑑賞しながらシネコン名物のポップコーンを食べていたところ、隣席にいた子どもが手を差し伸べてきたが、保護者である親は気づかずに放置されている。上映中に声を出すわけにはいかず、無言で子どもの手を制止しても、機嫌をそこねて泣き出したり、親にクレームを付けられる可能性も考えられる中、穏便にその場をおさめるにはどのような対応が適切だろうか。「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏がその対策を提言した。
◇ ◇ ◇
【今回のピンチ】
映画館でポップコーンを食べていたら、隣に座った5歳ぐらいの子どもが手を伸ばしてきて自分の口に放り込んだ。何度も繰り返すが、その向こうにいる親は気づいていない……。
◆ ◆ ◆
話題のアニメ映画を観に劇場へ。ポップコーンをちびちびつまみながら鑑賞するのが、お気に入りのいつものスタイルです。
ところが、隣に座った5歳ぐらいの男の子が、映画の途中でこっちのポップコーンのカップに手を伸ばして、自分の口に放り込みました。あわててカップを自分の正面に持ってきましたが、それでも手を伸ばしてポップコーンを奪いにきます。
男の子の向こうに座っている母親は、まったく気づいていません。せっかくの映画を心穏やかに楽しめない大ピンチ。さて、困った“ガキ"をどう撃退すればいいのか。
もっともシンプルな対処法は、伸ばしてきた手を「ピシャ!」と叩くこと。ただ、子どもが泣き出したら最悪です。にらみながらドスの利いた声で「取っちゃダメ!」と注意するのも、同じリスクがあります。
経緯を説明すれば、ほとんどの親は納得して子どもの不始末を謝ってくれるでしょう。ただ、ひと悶着は起きてしまうので、周囲に迷惑をかけてしまいます。しかも、昨今は「映画館でのマナー違反」に対して、必要以上に厳しい目を向ける人が増えました。
万が一、物分かりが悪いエキセントリックな親で、こっちを激しく責め立ててきたら、もはや映画どころではありません。
この状況でもっとも大切なのは、1分1秒でも早く、事態を鎮静化させつつ心の平穏を取り戻すこと。すでに「ポップコーンをチビチビつまみながら映画を観る」という夢は打ち砕かれています。まずはそこへの執着を断ち切らないと、先には進めません。
元凶はポップコーンです。それ以上食べることをあきらめて、椅子のホルダーに置いたまま、その子どもに好きなだけ食べさせるのはどうでしょうか。ただ、中途半端なところで親が気づくと、ひと騒動起きてしまうし、ヘタするとこっちが悪者にされかねません。
あらかじめ親に対して「お子さんが欲しがっているので、差し上げます」と小声で告げておけば、騒動の勃発や誤解をある程度は防げるでしょう。ただ、驚いた親があれこれ言い出す可能性はなくなりません。
かくなる上は、毒を食らえば皿までというか、無い袖は振れないというか、残っているポップコーンを一気に食べてしまうのがオススメ。ポップコーンがなくなれば、隣りの子どもが手を伸ばしてくることもありません。ことわざの使い方が間違っている気もしますが、そこは気にしないでください。
「知らないガキが手を突っ込んだポップコーンなんて食べたくないよ」という方もいらっしゃるでしょう。その場合は、手を突っ込まれた時点で、残りを全部あげる道を選ぶしかありません。それもまた運命です。
人生には、思わぬアクシデントが付きもの。取り巻く状況やリスクを勘案して、そのときに打てる範囲内で最善の手を打ちましょう。それが強く生きるということです。