ドライブが趣味のAさんは、休日に遠出をしようと普段通らない道を運転していた。すると、物陰に立っていた警察官がふいに手を上げ、こちらを制止してくる。路肩に車を停めたところで、「今の交差点、一時停止の標識を無視しましたよね」と青切符を切られた。
点数は1点減点で反則金は9000円ほど。この罰則によってAさんは、何年も無事故無違反で守ってきたゴールド免許を次の更新で失ってしまうことに。
警察の判断に納得できないAさんは、後日現場を見に行くと、標識は道端の電柱と重なる位置にあり運転席からはほとんど見えない状態だった。これに対して「こんなの見落とすなという方が無理だ…」と憤りを隠せない。
このように標識が見えづらい位置にあり、気づかずに一時停止の指示を無視してしまった場合、道路交通違反となってしまうのだろうか。アディーレ法律事務所の大垣優希弁護士に話を聞いた。
判別が難しい位置にあれば、違反が成立しない可能性がある
ー取締りを受けてその場で青切符に署名・押印してしまった場合でも、後から標識が見えにくかったと主張できますか?
青切符に署名・押印をしてしまった場合でも、それだけで違反事実を認めたことになるわけではありません。そのため、反則金を納付する前であれば、一時停止義務違反は成立しないと主張する余地があります。
もっとも、反則金を一度納めてしまうと交通反則通告制度に基づく手続きが終了するため、後から争うことは難しくなってしまいます。そのため、違反の成立について争う意思がある場合には、反則告知を受けた後、反則金を納付しないことが重要です。
反則金が納付されない場合、後日、反則金納付の通告を受け、それでも納付しなければ刑事手続へ移行することになります。その後、検察官が起訴した場合には、刑事裁判の中で違反の成否を争うことになります。
ーそもそも標識が見えづらい位置にあったために一時停止をしなかった場合、道路交通法違反になりますか?
運転者には周囲に注意を払って運転する義務があるため、単に「見えにくかった」という事情だけでは違反を免れることはできません。
もっとも道路交通法施行令では、道路標識は「歩行者、車両又は路面電車がその前方から見やすいように」設置しなければならないとされています(1条の2第1項)。
また、最高裁も道路標識について、「歩行者、車両等の運転者が、いかなる車両のいかなる通行を規制するのかが容易に判別できる方法で設置すべき」という基準を示しています。そして、こうした方法で道路標識が設置されていない場合には、通行規制が、適法かつ有効になされているとはいえないことから、道路交通法違反の罪を構成しないと判示しました。
そのため、たとえば標識が街路樹や電柱などによって著しく見えにくくなっているような場合には、違反の成立が否定される可能性があります。
ー道路交通法違反には当たらないと主張するためにはどうしたらいいですか?
標識が見えにくかったと主張する場合には、主観的な説明だけでなく当時の状況を客観的な証拠で示すことが重要です。
たとえば、標識が街路樹や電柱、看板などに遮られている状況であれば、その位置関係が分かる写真や動画を記録しておくとよいでしょう。とくに、実際に運転していた車両の運転席付近の目線や進行方向から撮影した資料は、当時の視認状況を示すうえで有用です。あわせて撮影日時も記録しておけば、後で状況を説明しやすくなります。
また、ドライブレコーダーの映像があれば、実際に走行していた際の見え方を客観的に示す有力な証拠となり得ます。
警察官に同行を求め、その場で一緒に視認性を確認してもらうのも1つの手です。その場で納得できない場合は、青切符へのサインをせず、疑問点を伝えるようにしましょう。
◆大垣優希(おおがき・ゆうき) 弁護士/アディーレ法律事務所
第一東京弁護士会所属。夫婦問題や遺産相続、債務整理など、多様な一般民事分野に関心を持つ。日本化粧品検定1級の資格も保有し、法律分野にとどまらず専門性を深めながら、身近な悩みに根拠をもって寄り添う解説を志す。
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