映画「偏向報道」(19日公開)の荻野欣士郎監督がこのほど、同作に主演したタレント・鳥居みゆきとともによろず~ニュースの取材に応じた。
映画は、地方のテレビ局を舞台に、怪文書を元に知事のパワハラ疑惑を報じようとする上層部と下請けの制作会社とのバトルを描いた作品だ。荻野監督はテレビ朝日「スーパーJチャンネル」でディレクターを務めたこともある報道畑出身。劇中には報道で使われるリアルな手法がちりばめられている。
テレビ出身の映画監督は多いが、ドキュメンタリー以外では報道出身者はほとんどいないとあって「やっぱり自分しかできないものだと思って、映画にしようと思いましたね」と攻めた題材について語った。劇中で制作会社のディレクター・油神鈴子を演じる鳥居は「みんなが監督の分身なんです。ほんと監督が散らばって演技してる感じですもん。言いたいことがもういろんな人に委ねられて」とそれぞれのキャラに荻野監督の思いが込められていると語った。
荻野監督がディレクター時代に上層部から教え込まれて印象に残っている言葉に「報道というものは放って送るもんだ」というものがあった。内容や報じ方に疑問があっても「毎週、川に流せ」と言われていた。荻野監督はいきなりディレクターになった形だったが、ADを経てディレクターになるようなテレビマンは「忘れる」ことも含めて教え込まれて慣れていくという。
一方で、放送では簡単に万単位の人に影響を与える可能性があるため、自身が「正義」であるかのように勘違いしてしまうこともある。「カメラを持つと正義って出ちゃうじゃないですか。人間ってカメラ持つと人格変わっちゃうんですよね」と語った。経費の使い方などで他部署と細かい差がつけられることがあるなど、局内での報道の“地位”の高さも説明した。
劇中の政治家への取材の場面では、声かけをするタイミングによって撮れる画像の印象が変わるなど、具体的な“印象操作”のテクニックも紹介している。参考にしたのは、国税局査察部を舞台にした伊丹十三監督の「マルサの女」(1987年)。知らない業界の裏側を知る楽しさを「説教臭くなく入れる。そのバランスがすごく大事だった」という。エンタメを入り口にして報道のテクニックを知ることで、視聴者がニュースを違った角度から見ることができるようになることを期待していた。
萩野監督はさらに、企画があと2つあることも明かした。続編については「やりたいとは思ってます」ときっぱり。鳥居も「お願いしまーす」と油神の再登場を熱望していた。