食事などで飲み込むたびに心臓が止まってしまうイギリス人女性が、画期的な治療を受けて、ついに「恐怖のない生活」を送れるようになった。
英国ハートフォードシャー州セント・オールバンズ出身で、助産師として働くサラ・ホールさん(50)は、極めて稀な疾患と診断され、食事や水分摂取のたびに失神やめまいを起こすため、毎回の食事が最後になるのではないかと恐れていた。
ホールさんは「この病気は、仕事、自立した生活、家庭生活など、あらゆる面に影響を及ぼしていました。家族での食事の際、夫は私が意識を失わないように私の隣に座らなければならず、子供たちは私が気を失わずに最後まで食べ終えられるかどうか心配していました」と語った。
さらに「本来なら普通の家族の時間であるはずが、ストレスと恐怖に満ちたものになってしまいました。運転もやめなければならず、数カ月間仕事を休むことになりました。それは私の人生で最も辛い時期の一つでした。食事中に心臓が止まって、二度と動き出さないのではないかという恐ろしい考えが頭をよぎるようになりました」と振り返り、「でも今は、恐怖を感じることなく生活できています」と続けた。
2児の母であるホールさんは39歳の頃から失神や吐き気に悩まされ始め、数年後には立っているだけでめまいを感じるようになり、9年が経つ頃には、食事中に定期的に意識を失うようになっていたという。当初は「忙しい助産師仕事による脱水症状や、更年期のせいだろう」と考えていたが、症状は悪化していった。
そしてホールさんが診断された病名は、「嚥下性心抑制性失神」。同疾患の報告例は世界中で150例未満となっている。心電図モニターを用いた検査の結果、24時間の間にホールさんの心臓が12回も停止していることが判明した。
嚥下(飲み込み)が迷走神経の過剰反応を引き起こし、その結果、心臓の拍動が劇的に遅くなるか、一時的に停止してしまう同疾患だが、ホールさんの場合、心臓が最大1分間停止することもあった。
従来の治療法は効果がなく、ホールさんは最終的に「心臓神経アブレーション(CNA)」と呼ばれる革新的な治療法の臨床試験に参加することになった。
英国心臓財団(British Heart Foundation)とNIHRインペリアル生物医学研究センターが支援するこの治療法は、問題の神経を標的とし、鼠径部からカテーテルを心臓に挿入して行われる。これにより神経活動を可視化し、熱を用いて細胞を破壊することが可能になる。
ホールさんは治療後の生活の変化に大喜びしており、こう語っている。「運転も仕事もできるようになりました。すべてが元通りになったような気がします。研究者や素晴らしい医師たちのおかげで、私の生活は本当に元通りになりました」