魚の骨で命を落とすことがあるというと大げさに聞こえるかも知れません。
しかしながら、魚の骨で命を落とすこともあるのです。昔に文献で読んだことはありましたが、実際に当院でも大変貴重な経験をしたので、皆様と共有したいと思い報告させて頂きます。
80代男性で、3日前に鯛のアラ煮を食べて喉のところに骨が刺さったので、うどんで流しこんだようです。その後、喉の不快感が取れたので様子をみておられました。最近、深呼吸をすると胸からお腹にかけて違和感があるということで来院されました。見た目は非常にお元気そうですが、夕方に来院され、お昼ご飯もしっかりと食べておられましたので、翌日に緊急内視鏡を施行しました。
食道の真ん中の少し下に鯛の頭の骨が刺さっていました。
普通の骨ではなく、目の周りにある大きな骨でした。周囲の正常組織を傷つけないように慎重に摘出を行いました。このまま放置していたら、炎症が周囲臓器に波及して大変なことになっていたでしょう。
食道の周囲には、心臓、肺、大動脈など様々な重要な臓器が隣接しています。鯛の骨が食道に刺さり、それが大動脈とつながり大出血を起こして死亡に至った人もいます。私が若いときに読んだ文献ですが、それが脳裏に浮かびヒヤっとしました。
幸いにも自覚症状があり、早期に来院して頂いたことが命拾いに繋がりました。魚の骨と思って簡単に考えず、しっかりと骨を取って食事するように注意して頂きたいと思います。特に鯛のような硬くてしっかりとした骨を有している魚を食されるときは、くれぐれも注意してください。
他にも高齢者の方の場合は、義歯、お薬を入れている容器(PTPシート)などを誤って飲んでしまうことが多々あります。
今回は運が良く町医者でも摘出できましたが、摘出には特殊な医療機器を要することが多く、出来るだけ大きな病院を受診したほうがいいでしょう。