米国ではトランプ大統領とオバマ元大統領による異星人に関する論争が波紋をよんでいる。ジャーナリストの深月ユリア氏が、6年前の米大統領選に出馬表明したこともある米国人の国際政治学者やUFO研究家でもある日本の作家を取材し、その背景にある可能性も考えられる“政治的意図”を聞き出した。
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AFP通信によると、オバマ氏は2月に出演したポッドキャスト番組で「宇宙に生命が存在する可能性は高い」としつつも、2009~17年の大統領在任中に「地球外生命体が地球を訪れた証拠は見ていない」と発言。さらに、「エリア51」に異星人が保管されている事実はないとも述べた。ちなみに、「エリア51」とは米ネバダ州にある空軍の極秘実験施設で、「UFOや宇宙人が隠されているのではないか?」という「UFO陰謀論」の象徴とされている。
その番組出演後の同19日には、トランプ氏が「オバマ氏は機密情報を提供した」と批判。だが、どの発言が機密に当たるのかは明らかにしていない。
筆者は、国際政治・外交政策を専門とする政治学者で、米外交戦略や東アジア安全保障を研究してきたエマニュエル・パストリッチ氏に見解を聞いた。パストリッチ氏は2020年の米大統領選挙で環境問題に配慮するリベラル政党「緑の党」から出馬を表明したが、取りやめた経歴もある。
パストリッチ氏は1964年生まれの61歳。「USAを盗んだ男—ドナルド・トランプの闇」「沈没してゆくアメリカ号を彼岸から見て」などの著書がある。親日家で日本国内の大学や議員会館などで開催されるシンポジウムなどに登壇し、東アジアとの協力関係や対等な日米関係に関する発言をしてきた。UFOについては、超常現象の肯定派という立場ではなく、「軍事技術の誤認や情報戦の可能性」という安全保障視点から発言している。
そのパストリッチ氏は「科学的観点から見れば、異星人が地球に到達している可能性は極めて低い。現在の物理学の見解では、惑星間移動には何万年もの時間がかかる」と断言した。その上で、今回の騒動について、同氏は「明確な政治的意図がある」とも指摘した。とりわけ、米国とイスラエルが2月28日に行った対イラン攻撃に言及し、「今回の異星人騒動は、イラン攻撃から目をそらさせる意図がある可能性が高い。国内外で波紋を広げる軍事行動から世論の関心をそらすため、刺激的で非現実的な話題を拡散させるのは典型的な情報操作の手法です」と主張した。
近年、未確認飛行物体(UFO)、現在は未確認空中現象(UAP)への関心が再燃しているが、パストリッチ氏は「その多くは新型兵器を誤認した可能性がある」と分析する。米国には未公表の新兵器があることは事実であり、その一例として指向性エネルギー兵器を挙げる。それはレーザーや高出力マイクロ波など、特定方向に強力なエネルギーを集中させて対象を攻撃・無力化する兵器を意味する。また、AI制御の無人機や自動ロボット技術も急速に進化しており、同氏は「一般市民にとって理解しづらい飛行体が“UFO”として認識される可能性は十分にある」と語る。
一方、長年に渡ってUFO・UMA・超常現象を研究し、「日本の都市伝説」「本当にあった怪奇事件ファイル」などの著書がある作家の山口敏太郎氏(59)も「政治には本命を通すための“ダミーを食らわす” というテクニックがある」と指摘した。
さらに、あくまで“私見”とした上で、山口氏は「例えば、高市早苗首相の『カタログギフト問題』(※首相側の自民党政党支部から当選議員個人にカタログギフトが贈られ、政治資金規正法との関係が取り沙汰された問題)も、本命の予算案を通すために意図的にリークされたとの噂がある。米政府がイラン攻撃に際し、一種の情報戦を行った可能性も否定できない」と推測した。
山口氏は「仮にそうであれば、オバマ元大統領も関与していたのかが焦点となる」と付け加えた。パストリッチ氏は「オバマ氏と2度面会したが、UFOの話題は出ていない。彼は科学的思考を重視する人物である」と強調した。
異星人発言の真偽はともかく、それ以上に、戦火が拡大するおそれのある中東情勢をはじめ、今、この地球上には、軍事行動と情報戦が交錯する現代政治の構図が浮かび上がっている。