22年間にわたって、斬新なデザインの中に膨大なデータを詰め込んだ阪神タイガースのカレンダーを作成している筋金入りの虎ファンがいる。“聖地”甲子園球場のある阪神間を拠点に活動する鉄道設計技士で、千葉大学工学部デザインコース非常勤講師の大森正樹氏だ。同氏が新たに作成した2026年版カレンダー(両面)のテーマは「ホームラン」と「ユニホーム」。阪神が連覇に挑む新年、当サイトに今回の企画について語った。(文中の選手名は敬称略)
大森氏は毎年テーマを変えて非売品のカレンダーを自主製作。その力作は阪神ファンだけでなく、膨大なデータを視覚的に表現したインフォグラフィック作品として注目されている。26年版のテーマの一つは「ホームラン」。なぜ、本塁打を題材にしたのかというと、25年に佐藤輝明が40本で、1986年のランディ・バース(47本)以来、阪神選手として39年ぶりのホームラン王に輝いたからだった。
球団創設の1936年から2025年までに飛び出した「8589本」の内訳として「日付別の本塁打数」「ホームランを放った全363人の年度別成績」などのデータを盛り込んだ。ちなみに、本塁打が出た試合の勝率は6割1分6厘(5643試合3372勝2100敗171分)、出なかった試合は4割2分4輪(5833試合2396勝3254敗183分)。球場別では甲子園(3310本)、神宮(752本)、後楽園(704本)、広島市民(620本)、ナゴヤ(550本)、横浜(501本)、東京ドーム(436本)、川崎(228本)…などと続く(全121球場)。その他、様々な角度から取り上げた情報が満載だ。
大森氏は東京で生まれ育った小学生の時に阪神ファンになり、千葉大卒業後、就職を機に憧れの地・阪神間に移住して現在に至る。1月2日に59歳の誕生日を迎えた大森氏。9歳から今年でちょうど半世紀となる観戦歴の中で見届けた「阪神と本塁打」について聞いた。
-阪神のホームラン打者「ベスト3」は?
「小学生の時、タイガースファンになって初めて見たプロ野球は神宮球場のヤクルトVS阪神(76年9月25日)。そこで見たホームランは田淵(幸一)36号でした。古沢(憲司)が完封勝利しました。やはりタイガースのホームラン・バッターといえば田淵です。その後、田淵と古沢がトレードで去り、若虎カケフ(掛布雅之)が急成長。応援しながら、共に大人になっていったような親しみがあります。そして、バース。来日初ホームランを見ています。1年目の83年はケガで出遅れていました。5月7日、神宮球場のヤクルト戦で左(投げ)の梶間(健一)からのホームランが『神様仏様バース様』伝説の始まりでした。この3人が、やはり印象深いです。順位をつけることはできません。『神3』です」
-球場で観戦中に目撃した最も印象的な一発は?
「85年10月16日、神宮、2点ビハインドの9回表。21年ぶりの優勝のかかった試合で、『今日は無理かな』と思われた時に飛び出した掛布のレフトポール直撃のソロホームラン。球場全体の空気が止まり、なんとも言えない静止状態がザワザワとうごめく…。そんなホームランでした。その後、岡田(彰布)の二塁打、北村(照文)の送りバント、代打・佐野(仙好)の犠牲フライで同点に。見事に吉田義男監督の胴上げを目の前で見たのでした」
-球場で目の当たりにした阪神選手のサヨナラ本塁打は?
「94年7月27日の新庄剛志、96年5月1日のグレン・デービス(満塁)、02年7月24日の濱中治、03年9月5日の矢野燿大、05年10月5日の鳥谷敬、06年5月2日の関本賢太郎、12年9月2日の新井良太、13年6月6日のマット・マートン」
-記憶に残る“伏兵”的な選手の一発は?
「11年7月26日(中日戦)の森田一生です。(代打でプロ初打席)初ホームランで、(1軍では)この1本のみでした。そして、彼は阪神でホームランを打った300人目だったんです」
また、もう一つのテーマが球団創設から90年間に渡る阪神ユニホームのデザインを俯瞰(ふかん)して描いた変遷史。25年に兵庫県の西宮市大谷記念美術館で開催された企画展「野球とデザイン」にちなみ、同展に自身も出品し、講演も行った大森氏が作成した。同氏は「76年の『輝流ライン』のユニホームは初めて野球を見始めた時のものなので親しみ深く、インパクトも大きいです。10年に交流戦限定で復刻した時はうれしかったです」と振り返った。
最後に今季の阪神への期待を聞くと、大森氏は「やはり連覇です」と即答した上で、「でも、(球団史上)“初”ではないです。1937年秋季、1938年春季で連覇していますので。1リーグ時代をしっかり認識してほしいです」との提言も忘れなかった。