英国演劇界を代表する劇作家、トム・ストッパードさんが11月29日、イングランド南西部ドーセットの自宅で静かに息を引き取った。88歳だった。巨匠の死に、演劇界や音楽界から追悼の声が相次いでいる。
ザ・ローリング・ストーンズのミック・ジャガーは「彼は私のお気に入りの劇作家だった。知的でユーモラスな作品群を残し、彼を永遠に恋しく思う」とSNSで綴っている。ローレンス・オリヴィエ賞は、12月2日の午後7時にロンドンの劇場街で灯りを2分間落とし、功績を偲ぶと発表。声明では「60年にわたる輝かしい経歴の中で、彼はオリヴィエ賞を3度、トニー賞を5度受賞し、『恋におちたシェイクスピア』でアカデミー賞も獲得した。その幅広さと影響力は舞台と映画双方に永続的な足跡を残した」と称えている。
1937年、チェコスロバキアのズリーンに生まれたストッパードさんは、ナチス占領下を逃れ英国に渡った。ジャーナリストや演劇批評家を経て、1966年に「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」で劇作家として頭角を現した。同作は1968年にトニー賞を含む数々の賞を受賞。1997年にはエリザベス女王から文学への功績によりナイトの称号を授与された。2000年にはメリット勲章も受けている。
映画脚本家としても活躍し、ジュディ・デンチ、ジョセフ・ファインズ、グウィネス・パルトローらが出演した1998年公開の「恋におちたシェイクスピア」ではアカデミー賞とゴールデングローブ賞を受賞。近年では2020年に「レオポルドシュタット」を発表し、オリヴィエ賞とトニー賞を再び獲得した。
その遺産は今後も舞台に息づいており、代表作「アルカディア」は2026年1月からロンドンのオールド・ヴィック劇場で上演予定となっている。