就職活動の際、第一志望の企業説明会に何度アクセスしても「満席」なのに、有名大学の友人は簡単に予約できた。ある学生が直面したこの不条理は、公には存在しないとされる「学歴フィルター」が原因かもしれない。
学歴不問を掲げる企業が増えるなか、まだ学歴フィルターは存在するのだろうか。キャリアカウンセラーの七野綾音さんに話を聞いた。
ー「学歴フィルター」は、実際に存在しますか?
「〇〇大学以下は採用しない」といった明言は基本的にありません。
しかし、新卒採用の現場を見ると、特定の大学の学生にだけ説明会の案内が届いたり、OB/OG訪問を活発に受け入れたり、結果的に学歴フィルターと呼ばれるものが働いていそうな場面はあります。
ーなぜ、「学歴不問」と言いながらフィルターをかける企業があるのですか?
公正な採用選考の基本である「応募者の適性・能力」は学歴だけでは測れません。そのため多くの企業はエントリーシート・SPI・面接などの複数のステップを設け、多様な人材の中から人物像を見極めようとしています。
もっとも、応募者が数千、数万と殺到するような大手人気企業では、全てのエントリーシートに目を通すことが物理的に困難なため、初期選考の効率化を目的に学歴を指標として使わざるを得ないケースがあります。
過去のデータから「特定大学出身者の定着率・活躍率が高い」傾向が見えると、その大学群へのアプローチを強めるのは、費用対効果の観点から合理的な経営判断となる場合があります。
ー書類選考で不利になりそうだと感じている学生がとるべき戦略はありますか?
大手有名企業ばかりではなく、同業界の他社に目を向けるのは一つの戦略です。しかし、どうしても希望企業に学歴フィルターがありそうなのであれば、「フィルターが働く前に勝負を仕掛ける」ことが鍵になります。
例えば、長期インターンシップで意欲的に行動し、成果や姿勢を直接見てもらうこと。また、企業のイベントやセミナー、OB/OG訪問を最大限に活用し、業界や企業への深い興味を示せる質問をして、顔と名前を覚えてもらうのも効果的です。
希望企業との直接の接点がないのであれば、業界セミナーやイベントへの参加で人脈を作り、間接的な接点を作りにいくことも可能性を広げるでしょう。
不公平に見える環境だからこそ、その構造を理解して能動的に接点をつくり、一人の人間として「自分の魅力を自分から届けにいく」という意識が重要です。
ーこの傾向は、新卒採用だけでなく、転職市場でも見られますか?
特定の大学出身者を優遇する傾向が残っていそうだなと感じる場面もありますが、非常に稀です。転職市場では学歴より「職歴・スキル・実績」といった、即戦力性・将来の成長可能性に繋がるかの方が圧倒的に判断基準の中心となるからです。
ー最後に
もちろん学歴は努力の証である大切な要素です。しかし、就活における評価のメインは、学生生活で「何を考え、何をして、どのような人間性を培ってきたのか」という本質の部分です。学歴フィルターを過度に恐れず、自分の魅力を言語化し、伝えることにぜひ注力していただきたいです。
◆七野綾音(しちのあやね)キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント
やりがいを実感しながら自分らしく働く大人を増やして、「大人って楽しそう!働くのって面白そう!」と子ども達が思える社会を目指すキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント。