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小5で見た「東京ラブストーリー」に衝撃を受けて俳優の道へ 波岡一喜「パッチギ!」が0→1への大きな転機

中江 寿 中江 寿
波岡一喜(撮影・西田忠信)
波岡一喜(撮影・西田忠信)

 ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍している俳優の波岡一喜(47)がこのほど、大阪市内でよろず~ニュースの取材に応じた。数多くの作品でさまざまな役を演じてきた波岡が、俳優になったきっかけ、ターニングポイントなどを語った。

 大阪国際文化芸術プロジェクトの舞台「姫が愛したダニ小僧」(2026年1月9日~18日、大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ)に出演する。大阪の劇作家・後藤ひろひとが1988年に書き下ろした名作のリバイバル上演。「大学時代に舞台をやっていたときに、後藤さんはもう有名人やったし、そういうレジェンドの方の、すごく面白かったと言われる再演に参加させてもらえるというのは、すごくワクワクしています」。ただ、楽しみにしながらもプレッシャーも感じている。評判だった作品だけに「比べられるとは思うんです。打ちのめされないように、勝ち負けではないですけど、負けたくないなっていう思いではいます」と意気込みをのぞかせた。

 俳優を目指すきっかけは、小学5年生の時に初めて見たドラマ「東京ラブストーリー」。織田裕二が演じる主人公と鈴木保奈美のヒロインを中心に織りなす物語。1991年に放映されて大ヒットした。「こんなに面白いもんがあると思って。その時に漠然と『あっち側に行きたいな』と思ったんですよね」。将来を思い描くようになり、高校に入学すると演劇の養成所に通った。

 織田と鈴木とドラマで共演したときに、織田には思いを伝えられなかった。「お芝居に真っすぐな方だし、すごく優しいんですけど、おこがましいというか…。〝好きです〟〝憧れていました〟みたいなことを言っても、〝ありがとうございます〟で終わってしまうから。自分だったら、そうなるだろうし、それだったら、言わなくてもいいかなって」。安直な会話で終わりたくなかった。鈴木には明かしたところ、「お役に立てて良かったです」と返してくれたという。

 知り合いから「俳優になるなら東京に行かないと」と言われ、高校卒業後は上京するつもりでいた。母親からは「大学に行くなら」と条件付きで許され、1浪して最難関の早稲田大学政治経済学部に入学。ほかにも一流大学に合格したが、早大を選んだ。「芸能界に行く方が多いイメージがあったし、ハナからお芝居をするつもりだったので。中退した方も有名人が多いので、中退も視野に入れていました」と笑みを浮かべて語った。

 大学時代は演劇研究会、文学座の養成所などで演技を学んだ。なんとか大学を4年で卒業したものの、バイトをしながら、自主映画、舞台に立つ生活が続き、すぐに俳優として一本立ちできなかった。

 しかし、24歳で現在の事務所に入ると、大きな転機が訪れる。木村拓哉主演の「プライド」(2004年)のオーディションに合格。ドラマデビューが決まった。共演者も人気、実力派の俳優がズラリ。「あの経験がすごく良かった。人気も実力も一番の俳優が目の前にいるところで、初めてやらしてもらったんで」。大きな財産になった。木村とは違う作品で再会したが「相変わらず覇気がすごかったですね。(こちらが)倒れそうになる」と、まばゆいばかりのオーラを感じるそうだ。

 俳優として大きく道が開けたのは「プライド」撮影中にオーディションを受けた2005年公開の映画「パッチギ!」。監督の井筒和幸の前で「オカンのためだったら死ねます」と言ったところ、「おまえ、ちょっと面白いな、この役のまんまやな」ということで、準主演の座をつかんだ。

 「プライド」は高視聴率、「パッチギ!」も大ヒット。この2作品で世に出たと感じている。「井筒さんには徹底的に仕込まれましたので、(役者として)変わりましたけど、何よりも作品が当たった」。作品を見た関係者からオファーが数珠つなぎのように来るように。気がつけばオーディションを受けることもなくなり、バイトもせずに俳優業だけで生活ができるようになっていった。

 これまでで最も印象に残っているのも「パッチギ!」だ。「一番しんどかったし、一番恩義を感じているし、それがあったから、今があるっていう。俳優として0から1に上がった瞬間っていうものは、あのときかなと思いますね。周りから一緒に仕事がしたいなと思える俳優さんになったっていうのが、たぶん」。周囲の目が変わった。「自分からオーディションを受けないと仕事がないのと、待っててもお話が来るのとは雲泥の差なので。俳優として0から1、1から2、2から3と転がって行くなかで、0から1が一番大変だと思います」。自身が「運」と語る、作品や人との出会いが俳優を続けていく上での重要なポイントになっている。

 ◆波岡一喜(なみおか・かずき)1978年8月2日生まれ、47歳。大阪府出身。早稲田大学卒業。2004年に「プライド」でドラマデビュー。2005年公開の映画「パッチギ!」の準主演モトキ・バンホー役で注目される。NHK 連続テレビ小説「ごちそうさん」(2014年)、NHK大河ドラマ「どうする家康」(2023年)に出演するなど、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍中。

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