今やエノキタケやブナシメジと同じようにメジャーなキノコ類として日本の食卓に普及したエリンギ。シャキシャキと食感も良く、炒め物や鍋など様々な献立に使うという人が多いのではないだろうか。
さて、このエリンギ。近年になって急速に普及したように感じるのは筆者だけだろうか。昭和の食卓には無かった気がするが、一体いつの間に日本の食文化に定着したのか。ホクト株式会社のきのこバカセに、エリンギ普及の経緯について話を聞いた。
――本来日本には無いキノコだったそうですが、国内栽培のきっかけは?
きのこバカセ:台湾経由でエリンギの存在を知りました。栽培して食べてみると、見た感じはヒラタケのようですが食感がブナシメジのようにしっかりしていて興味を持ちました。味もクセが無く甘みが強いので、当時これはいけると確信しました。
――本格的な栽培・販売に至るまでで大変だったことは?
きのこバカセ:基本的に他のキノコと同じように栽培できるので、当初は簡単だと考えていました。しかし同じ生育室で繰り返し大量栽培していると、病気に弱く生育途中で立ち枯れる現象が。これを解消するのが大変でした。キノコといえば健康食材。無農薬栽培なので困難を極めました。エリンギは他のキノコに比べ、特に「清潔好き」なキノコなんですよ。
――急速に普及したように感じますが、普及の要因は?
きのこバカセ:ホクトが栽培方法の研究開発を始めたのが1995年頃。1996年~2000年頃には大量生産できる工場を稼働させましたが、なかなか認知度が上がらず苦戦しました。しかし2000年11月、以前から研究を継続していたエリンギの「肝障害予防効果」が新聞で発表。さらに同時期、サザンオールスターズの桑田佳祐さんがテレビの歌番組で「最近はまっているキノコ」と言いながらポケットからエリンギを出して紹介してくれたんです。これをきっかけに急速に認知度が上がり、一時は爆発的に売れる状態に。桑田さんの影響力は絶大で、大量生産できる工場を増設するまでになりました。
――次の目標は?
きのこバカセ:エリンギの良さは、まだまだ伝わり切っていないと考えています。例えば、エリンギを輪切りにした「エビチリ」ならぬ「エリチリ」(レシピはクックパッド参照)は、エビよりもおいしいと思う人も多く、個人的には「エビを超えた!」と思っています。エビアレルギーの方にもおすすめです!
また次は世界的に有名な「ポルチーニ」(個人的には世の中で一番おいしいキノコと思っています)の栽培方法を確立して普及を目指し、世界征服を目指しています!
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今やスーパーで普通に購入できるエリンギの普及に、なんと桑田佳祐氏が一役買っていたとは。次なる目標のポルチーニ普及に向けて、今度は一体どんなドラマがあるのか楽しみにしたい。
ホクト公式 X
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キノコばかせプロフィール
キノコ研究歴36年の博士。リュウジのバズレシピにも複数回出演し、初回コラボ動画は87万回再生を記録した。