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自宅の火事で亡くなった父親 遺言書も一緒に焼失してしまい…どうなるの?行政書士が解説

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遺言書は、故人の意思を遺族に伝えるための重要な書面である。相続争いを避けたり、適切な遺産分割を行うためにも厳重に管理しておかなければならない。しかし、自宅にて厳重に保管してある遺言書が、火災や自然災害などによって焼失してしまった場合、どうすればいいのだろうか。北摂パートナーズ行政書士事務所の松尾武将さんに聞いた。

ー遺言書が焼失した場合の相続手続きはどうなるのでしょうか

被相続人が遺した遺言書が自筆証書遺言や秘密証書遺言で火災により焼失してしまった場合、焼失した遺言書は「存在しない」ものとして扱われます。

したがって、被相続人の遺産は、原則として法定相続人が法定相続分に従って相続することになります。その後具体的な遺産の帰属手続きとして、まずは相続人全員で「遺産分割協議」を行います。これは、誰がどの財産をどれだけ相続するかを話し合いで決定することです。

預貯金、不動産、株式など、故人の遺産全体を把握し、その評価額を算出した上で、具体的な分割方法を協議します。協議がまとまれば、「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名捺印又は記名押印します。この協議書に基づいて、不動産の名義変更や預貯金の名義変更、解約などの手続きをすすめていくことになります。

万が一、意見がまとまらない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」、「遺産分割審判」を申し立てることになります。調停では調停委員が間に入り、話し合いによる解決を目指しますが、それでも合意がみられない場合は審判に移行し、裁判官が分割内容を決定します。

重要なのは、遺言書がない場合、審判分割を除くと相続人の合意形成が不可欠となる点です。

ー口頭で聞いていた遺言内容は有効になるのでしょうか

仮に相続人の誰かが被相続人から遺言書の内容を口頭で聞いていたとしても、有効にはなりません。また、相続人以外の一定の者が遺言内容を口授されたり口頭で遺言されていたとしても、それだけでは有効となりません。日本の民法では、遺言の方式は厳格に定められており、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」などの形式による書面での作成が不可欠です。

したがって、単に口頭で伝えられた内容は、法的な遺言としては認められません。たとえ複数の証人がいたとしても、書面とならない口約束は遺言としての効力を持ちません。ただし、この口約束が死因贈与契約と評価できる場合には、遺産を取得できる余地はありますが、書面によらない契約がトラブルのもととなるのは他の契約と同様です。

ー焼失・紛失を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか

最も確実な方法の一つが「公正証書遺言」を作成することです。公証役場で公証人に作成してもらう遺言書であり、原本が公証役場に保管されます。また、遺言者の承諾を前提に電磁的にも保管されます。自宅で保管していた遺言書の写しが焼失・紛失したとしても、公証役場で謄本(写し)の再発行が可能です。

その他、法務局で保管してもらえる「自筆証書遺言保管制度」を利用すれば、遺言書は法務局で原本として又電磁的情報として保管されるため、焼失、紛失、改ざんのリスクを大幅に軽減できるでしょう。

いずれにせよ保管方法も含めて、専門家への相談を視野に入れて万全に準備されることをおすすめします。

◆松尾武将(まつお・たけまさ)/行政書士

長崎県諫早市出身。前職の信託銀行時代に担当した1,000件以上の遺言・相続手続き、ならびに3,000件以上の相談の経験を活かし大阪府茨木市にて開業。北摂パートナーズ行政書士事務所を2022年に開所し、遺言・相続のスペシャリストとして活動中。ペットの相続問題や後進の指導にも力を入れている。

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