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「俺の酒が飲めないのか」は通用しない!業務時間外のアルハラ&パワハラと企業の責任とは…社労士が解説

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部署の懇親会やプロジェクトの打ち上げの席にて、今もなお「俺の酒が飲めないのか」といった言葉が飛び交うことがあるようだ。飲みニケーションの名のもとに、多くの職場で見られた光景だが、現代では「付き合いの悪さ」の問題では済まされない。

それは、アルコールハラスメント(アルハラ)とパワーハラスメント(パワハラ)に他ならない。では、これらが「業務時間外」でおこなわれた場合、法的な扱いや会社の責任はどうなるのだろうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに聞いた。

ー業務時間外の飲酒の強要は、アルハラ・パワハラとみなされますか?

パワハラの成立要件に、行為が行われた場所や時間は関係ありません。パワハラは、基本的に「職務上の優越的な関係を背景」として、「業務の適正な範囲を超えて」「労働者の就業環境が害される」という3要件が当てはまれば認定されます。このなかに、場所や時間の指定はないのです。

懇親会や飲み会は業務時間外ではあるが、参加しているのは上司と部下です。そこには紛れもなく「職務上の優越的な関係」が存在します。部下にとって、上司からの誘いや勧めを断ることが心理的に極めて困難であることは想像に難くないでしょう。

ー業務時間外のハラスメントに対して会社は責任を負うのでしょうか

当然、会社の責任が問われます。企業には、従業員が安全で健康に働ける環境を整える「安全配慮義務」があり、オフィスの中や所定労働時間内だけに限定されるものではありません。会社の懇親会のような場も、実質的に業務の延長線上にあると見なされ、安全配慮義務の範囲に含まれると考えます。

また、日本企業の場合、「会社の信用を傷つける行為をしないこと」といった服務規律が定められていることが多くあります。従業員が就業時間外であっても、会社の一員として節度ある行動を求めるものであり、企業が従業員の私的な領域にも一定の関与をすることが社会的に認められている側面があります。

ー上司の言動(飲酒強要、暴言、人格否定など)は、法的問題に該当する可能性がありますか?

「付き合いが悪い」「だからお前はダメなんだ」といった暴言や人格否定は、それ自体がパワハラに該当すると考えます。飲酒の強要、いわゆるアルハラは、さらに深刻な事態を招きかねません。

もし無理に飲ませた結果、相手が急性アルコール中毒などで健康を害すれば「傷害罪」に問われる可能性も考えられます。脅迫的な言動で飲酒を強制すれば「強要罪」が成立するかもしれません。ノリや冗談では済まされない場合もあるのです。

◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士/こころ社労士事務所代表 

大阪府茨木市から労使の共存共栄を目指す職場づくりを支援。人材育成・定着のための就業規則整備や評価制度構築、障害者雇用、同一労働同一賃金への対応といった実務支援は、常に現場の視点に立つ。ネットニュース監修や講演にて情報発信を行う一方で、SNSでは「#ラーメン社労士」としても活動し、親しみやすい人柄で信頼を得ている。

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