仲間の活躍に複雑な思い…55歳の元アイドル芸人が求める場所「何も成し遂げていない」再びコンビで漫才も

中江 寿 中江 寿
水玉れっぷう隊・ケン
水玉れっぷう隊・ケン

 吉本新喜劇「金の卵12個目オーディション」に合格し、55歳で今年入団したお笑いコンビ・水玉れっぷう隊のケンがこのほど、よろず~ニュースのインタビューに応じた。お笑いを目指したきっかけ、相方・アキへの思い、これからの夢などについて語った。

 アキとの出会いは高校3年。アルバイト先のディスコだった。同じバイクに乗り、生年月日も同じで意気投合。高校卒業後はケンは自衛隊に入隊、アキは京都の太秦映画村でスタントマンとなったが、親交は続いていた。「自衛隊を2年でやめようと思っていたので、アキのとこでスタントマンをやりたいと言ったら、『めちゃくちゃつらいし、裏の仕事で全然前に出られへん。俺、前に出たいから、2人で何かやられへんか?』って言われて」。結論がお笑いだった。

 横山ノックの弟子でショーパブを経営していた横山アラン・ドロンのドロンに難波の戎橋でアキがスタッフとしてスカウトされた。2人で店に出向くと、お笑いのコーナーもあり、面接でアランに「お笑い芸人になりたいんで、ここで働かせてください」と直訴。芸人として第一歩を踏み出した。

 客の中にNGKで切符切りをしていた女性がいた。その女性が大阪・心斎橋筋2丁目劇場の支配人に「ショーパブに面白い子が2人おる」と伝えると、劇場に見せに来なさいという話しに。ネタを披露したところ、劇場のお笑い大会に出場することになった。チケットのノルマは出場者1組につき5枚。ただ、ショーパブのツテを頼れば、たくさんさばく自信はあった。150枚もらって、全部さばき切った。

 大会当日の観客はショーパブの客ばかり。「僕らの(出番の)時しか笑わなくて。お客さんからしたら、普段ショーパブで見ているネタを2丁目でやっているので、応援しがいがあるし、頑張れ、頑張れという」。ホーム感満載の中で優勝した。

 関西でアイドル的な人気を誇るも、主戦場となった2丁目劇場が99年に閉館して活躍の場が少なくなり、01年にルミネthe よしもとができることをきっかけに東京へ進出。なかなか日の目を見ることはできなかった。14年には相方のアキが新喜劇に入団するため大阪へ戻ることにしたが、東京で何か結果を残すまでは帰りたくない。「やり残した事がある」とひとり残り、ルミネの舞台、テレビ、映画などに活躍の場を求めた。

 昨年の9、10月頃にアキがプロデュースする舞台の熱烈なオファーを受けたことをきっかけに、心境に変化が生まれた。吉本新喜劇入りを決意。オーディションに合格し、25年に新喜劇に入団した。東京から大阪に戻り、正式な座員として4月に舞台に立ったばかり。「連続で1週間、芝居ができるというのはなかったので。一日4回やるなんて未知の世界ですよ。僕がこれだけしんどいのに、師匠の方とか皆さん、余裕でやっているので」。ペースには慣れないながらも、日々、奮闘している。

 コンビを結成して33年。東京と大阪に別れて活動していた時期もあったが、定期的にライブを開くなど解散することなく続いている。「基本、仲はええですよ。学生時代の友達の時みたいな感覚は、今でもあります。ずーっと一緒にやってきたので、多くをしゃべらなくても、何となく分かるみたいな」。長年培った2人だからこそ、通じ合えるものがある。

 後輩芸人からは結成16年以上の芸人を対象とした漫才コンテスト「THE SECOND」への出場を促されることも。「若い頃は漫才もやっていましたけど、そんな簡単なものではないです。絶対に積み重ねだと思いますし、『ないな』とは言っています」。アキは23年に座長に就任して多忙、自身も座員になったばかり。漫才を考える余裕はない。

 ただ、いつかは出たい気持ちもある。「世間の人に新喜劇の中で水玉れっぷう隊のケンと知られるようになったら、僕の中でも余裕が出ますし、相方も座長を長いことやっていたら、それなりに余裕も出てくると思うので、そうなったら」。時間が立てば機会が生まれるかもしれない。

 2丁目劇場では、千原兄弟、メッセンジャー、ジャリズム、中川家、ケンドーコバヤシ、海原やすよ・ともこら、先輩、同期、後輩と競い合っていた。「あのときに一緒にやっていたメンバーがみんなホンマに売れて。そう考えたら、俺、何も成長してないみたいな」。苦楽をともにした仲間の現在の活躍を喜びながらも、複雑な気持ちもある。

 ハングリー精神は失っていない。「何もまだ成し遂げていないので。最近人気出てきたなとか、いろんな仕事ができているなとか。CM入ったぞ、忙しくなってきたぞ、今月の給料めっちゃあるとか。そういうのに飢えているので」。このままでは終われない。「『徹子の部屋』に出たいですね。活躍している人が出るじゃないですか。親戚のおっちゃんとかみんなに言えるなあ」と笑った。

 ◆水玉れっぷう隊・ケン 1969年8月22日生まれ、55歳。奈良県出身。アルバイト先で知り合ったアキと92年にお笑いコンビ「水玉れっぷう隊」を結成。01年に東京へ進出。14年にアキが吉本新喜劇に入団するにあたり、東京に1人残る。吉本新喜劇金の卵12個目オーディションに合格者し、25年に吉本新喜劇に入団。

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