球団創設90周年を迎えたプロ野球・阪神タイガースに関する貴重な品々を展示する企画展「野球とデザインーデザインで辿る阪神タイガース」が31日から7月27日まで兵庫県の西宮市大谷記念美術館で開催される。中でも注目は球団の歴史と共に歩んだ「虎のマーク」などを生み出した〝伝説のデザイナー〟の作品だ。研究者であり、自身も出品する鉄道設計技士で千葉大学工学部デザインコース非常勤講師の大森正樹氏(58)に話を聞いた。
今年は節目の年に当たる。阪神電気鉄道会社が1905年に神戸(三宮)から大阪(出入橋)間の営業を開始して120年であり、甲子園球場がある西宮市は市制施行100年、阪神タイガースは1935年に大阪野球倶楽部として創設されて90年となる。
日本のプロ野球球団の中で、阪神は球団創設期よりほぼ変わらない虎マークやタイガースのロゴ「Tigers」、縦縞のユニホーム、球団旗(黄色と黒の横縞)を使っており、そのデザインを担当したのはグラフィックデザイナーの早川源一氏(1906-76)だった。
大森氏は早川氏について「企業内デザイナーだったため、著作や作品集がなく、まとまって紹介される機会がありませんでした。私も(阪神ではない)鉄道会社のデザイナーとして他人とは思えず、彼についていろいろと研究し、その中で得たご縁から、彼の作品を集めて展示することができました」と振り返った。
さらに、大森氏は「初めて公開されるものも多くあります。早川さんがデザインした『ジャガーズ』(※1954年から56年まであったファームのチーム名)マークの原画や、ユニホームの胸レター『OSAKA』の複数案、晩年の自画像(油絵)も展示されます」と付け加えた。
その大森氏は1967年に東京で生まれ育ち、小学3年だった75年から阪神ファンとなった。「黄色いツバの帽子を見て12球団の中で一番かっこいいと思った。それが始まりですね」。その翌年に早川氏はこの世を去っていたことになる。
今回の会場にはポスター「大阪タイガース来る」(1936年)など早川氏による数々の作品のほか、1956年の「大阪タイガース」のユニホームや、戦前の36年から2023年の日本一達成試合チケットまで数十点の入場券などが展示される。
大森氏は千葉大学を卒業後、就職を機に憧れだった兵庫県の阪神エリアに移住し、仕事の傍ら、自身がデザインしたタイガース関連作品を生み出してきた。
代表作は虎マークの路線図。その最新作「虎の路線図2025」を出品する。また、21年間作り続けている阪神のデータカレンダーや、初年度の2013年から12年分の「ウル虎の夏」レプリカユニホームなども提供。6月8日には「入場券が物語る野球の歴史」講演会で講師・山岸茂幸氏(野球チケット博物館主宰)の聞き手となり、7月13日には「自分路線図を作ろう」と題したワークショップの講師を務める。
「日本のプロ野球において、1936年のリーグ開始から存続しているのは、巨人、阪神、中日、オリックス(阪急)の4球団。その中で同じ球場、同じユニホーム、同じマーク、球団旗、球団歌のある球団はタイガースだけです」。そう解説した大森氏。「虎マークをデザインし、ゆるぎないタイガースブランドを作った早川さんの功績は野球殿堂入りに値すると思っています。この機会に存在を知っていただければ」と呼び掛けた。
開館時館は10~17時(水曜休館)。入館料は一般1200円ほか。応援ユニホーム・Tシャツ・法被など着用で100円引きになる「ユニホーム割」も実施する。