女優・小川菜摘が人気劇団「東京マハロ」の7年ぶりとなるリバイバル公演「明日、泣けない女。昨日、甘えた男」(5月3-11日、新宿シアターサンモール)に初出演する。50歳の節目を迎えた2012年に演劇活動を再開して以来、舞台が活動の軸となっている小川が都内の稽古場で、よろず~ニュースの取材に対して思いを語った。
物語は小さな漁師町が舞台。小川は、増田有華が扮する「性依存症に悩む女性」に寄り添うスナックのママを演じる。
「町の人たちの事情は全部知っていて、達観している…という役柄で(脚本・演出家の)矢島弘一さんと話し合っています。自分や相手の役をどう捉えるか、考える時間を与えていただきありがたいです。『セックス依存症』というテーマですが、人はみんな何かしらの依存をして生きていると思います。お客さんにも『依存症って身近なもの』と感じていただければ。また、重いテーマだけでなく、男の人のバカな部分や大事にしている部分がリアルで、笑わそうとしてなくても、日常の光景がとてもおかしい…というところも伝われば」
78年、日本テレビ系ドラマ「ゆうひが丘の総理大臣」でデビュー。その後、文学座の研究生になったことが舞台の原点となる。
「『ゆうひが丘~』では私と藤谷美和子さんだけが15歳の現役高校生で、他の生徒役の方は20歳以上。芝居のことは右も左も分からなくて、『こんなんではダメだな』と思って、文学座に入り、1年間研究生として演劇の基礎を学びました」
89年にダウンタウン・浜田雅功と結婚。育児などのため演劇活動を休止した。舞台復帰は12年、宇梶剛士、渡辺いっけい、山西惇ら同学年の俳優10人で結成した「劇団500歳の会」の旗揚げ公演への参加が転機となった。
「50歳になる年に26年ぶりに演劇に復帰し、今年で13年目。まだ学ぶことだらけです。60歳の時は『劇団600歳の会』をやり、『650歳の会』もやろうかという話も出ています。毎年3-4公演、多い年で5本くらい。復帰してから35-40本ほどになりますかね」
舞台の魅力とは。
「映像作品は演出家と瞬時にそのシーンを作る楽しさがありますけど、演劇は一から全員で作っていく喜びがある。お客さんの前で、その反応が直に分かる喜びとライブ感もいい。私はスナックのママ役がすごく多くて、きっと〝スナックのママ顔〟なんでしょうね(笑)。今回の役には『男ってバカよね』って、お腹の中で思いながら、広い愛情があって、相手の気持ちの揺れも敏感に察して…というところや、別れた旦那や息子に対する思いもある」
実生活での家族についても語った。
「舞台復帰の時には家族にも相談して、(夫から)『子どもも大きいんだから、やりたいことやったら』と言ってくれたので、『じゃあ、お願いしますね』と。公演中は協力もしてくれてます。それがないとなかなか…。私が演劇を一時あきらめたのは、子どもが生まれて、演劇をやっていたら家庭が回らないということが分かっていたから。2人の息子は今、30を超えて自立してますし、親子とも、お互い依存せず、勝手にやってという感じ(笑)。この年になったら、私も好きなことやらせてもらおうかなと」
長い芸歴では昭和を代表する喜劇人との共演など、貴重な経験を重ねてきた。
「由利徹さんと福島県の劇場に40日間出ました。由利さんと佐山俊二さんが夫婦役で、私が町娘役。由利さんの針と糸の(裁縫パントマイム)芸を生で拝見しました。(新宿の)コマ劇場では八代亜紀さんや橋幸夫さんの公演にも出たり…。テレビのバラエティーも含め、いろんな事をしてきました。それらが全部、自分の引き出しになっていればいいなと、演劇をやっている今、思いますね」
5月の本番に向け、稽古場で日々、役に命を吹き込んでいる。