1985年は前年に発売されたファミコンが2年目に突入し、多くの人気作が世に出た年だ。1月にはファミコン界を代表する「仲間割れゲーム」が2作発売された。友達同士でプレイしていて「お前!足引っ張るんじゃねえよ!」と思わず言いたくなる2作品とは『アイスクライマー』と『バルーンファイト』だ。
『アイスクライマー』は、1985年1月30日に発売された縦スクロールアクションゲームである。プレイヤーは「ポポ」と「ナナ」という2人のキャラクターを操作し、氷山の頂上を目指す。ハンマーを使って足場となる氷を壊しながら上昇していくのだが、ここに仲間割れの要素が潜んでいる。
片方のプレイヤーが先に上の階層に到達すると画面が上にスクロールしてしまい、遅れていたもう一方のプレイヤーは画面外に置いていかれてミスになってしまうのだ。
筆者も当時、友人宅に集まって『アイスクライマー』をプレイした際も、最初は協力して頂上を目指していた。しかし、いつしか「先に上に行こう」という競争心が芽生え、相手の行動を妨害し始める対戦ゲームへと変化していった。氷を壊して相手の足場を奪ったり、わざと遅れて相手をイライラさせたりと、いやがらせや駆け引きでお互いの妨害しあうことに楽しみを見出したものだ。
もう1つの仲間割れゲーム『バルーンファイト』は、1985年1月22日に発売された。プレイヤーは風船を背負ったキャラクターを操作し、空中を浮遊しながら敵を倒していく。本作も2人同時プレイが可能で、協力して敵を倒せる。
そんな同作の仲間割れ要素は『アイスクライマー』以上に露骨で、なんと味方の風船を割ることができるのだ。当初は事故を装って味方の風船を割り、徐々に偶然を装うのをやめて、気づけば仲間同士で風船を割り合う展開になることも珍しくなかった。
筆者の記憶では、友人と同作をプレイしていた際、「敵を倒すのを手伝ってくれ」と頼まれて近づいたところ、突然風船を割られたことがある。その瞬間の驚きと裏切られた感覚は、今でも鮮明に覚えている。そこから始まる「仲間割れバトル」が、むしろゲームの面白さを引き立てていたのである。
両作品に共通するのは、協力プレイの中に競争要素が含まれていることだ。『アイスクライマー』では画面スクロールによる強制的な競争が、『バルーンファイト』では風船を割り合える自由度が仲間割れの引き金となる。
2作品は任天堂のバーチャルコンソールやNintendo Switch Onlineで配信されており、現代の環境でも楽しむことができる。久しぶりにこれらのゲームをプレイしてみてはいかがだろうか。子どもや孫と一緒に遊べば、世代を超えた新たな「仲間割れ」体験ができるかもしれない。