トヨタが「調理器具」に挑戦!実演に関係者が興味津々「水素を身近に」環境面で利点も費用に課題

髙石 航平 髙石 航平
水素ガスを利用して焼き上げるグリル機
水素ガスを利用して焼き上げるグリル機

 自動車の最新技術やデザインに関する情報を紹介する「ジャパンモビリティショー2024」が15日から、千葉県・幕張メッセで開催。トヨタ自動車は開催テーマでもある「モノづくり」「カーボンニュートラル」の観点から、水素を利用した「調理器具」と「発電機」をブース展示した。

 今回はコンロ、グリル機や発電機を展開。会場の外では実際に水を湧かしたり、グリルで肉や野菜を焼いて稼働の様子を展示し、関係者や自動車ファンの多くがその様子に関心を寄せた。「トヨタ=車」と考える人が多い中、なぜこの驚きの展示内容になったのか。関係者は「一見、遠回りのようにも見えるんですが、これも我が社が力を入れる『モビリティ』(人やモノを空間的に移動させる能力)につながっている」と説明する。

 前提として、トヨタは水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーでモーターを回して走る「燃料電池自動車」の開発に力を入れている。だが同関係者は「水素を使ったモビリティを普及させるためには、今の取り組みでは進まないという現状です。日本だと今は3車種(クラウン2車種、CRV)しか共有できていないし、正直そんなに台数が出ていない」と現状を赤裸々に語った。

 なぜ購入されないかという原因については「水素に対してポジティブな意味合いを持っている人が少ない」と推察。「そもそも水素のインフラ(供給する場所)が少ないですよ。あとは顧客が求める車がまだできていないというところ。安全性はどうなのか、危ないんじゃないかとか、他の用途は何もないよねみたいな意見も大きい」。その解決策を考えた結果、「水素を身近にしていくという切り口を考えて。車両ももちろんやるんですけれど、水素を気軽に使える、持ち運びできるモノとして、家庭向きの利用用途に行き着いた」と今回の展示に至った理由を説明した。

 水素を溜める形状は車用の水素タンクから派生し、より持ち運びやすく、使いやすいカートリッジ型に設計。重さは8.5キロとずっしりだが、「小さくなる方向になっていくと思います。現状はバッテリーとの戦い。小さいと使いやすさの面で『バッテリーの方が良いよね』と言う世の中に今はなっているので、ある程度バッテリーよりも水素をためられて、バッテリーに対してこのエネルギー量だったら軽いよねというサイズがこれだったので、この大きさでスタートしています」と話し、改良の余地もあることを説明。容量に関しては「1本で一般的な家庭用のガスボンベと同じくらい。グリラーだと3、4時間ぐらい使えるイメージです」とし、0%から100%までの充填時間は「試作品の段階だと10分から20分くらい。将来的には1分くらいに縮めたい」と話した。

 気になるのは「水素」を利用することの利点。燃焼しても水蒸気しか発生しない点で地球に優しいという面はもちろんのこと、「1400度から1700度くらいと火炎温度は高いです。なので早く焼けますし、水蒸気が出るので普通のガスや炭火での調理よりもふっくらと焼けます」と話した。

 ただデメリットもある。前述の「インフラ」がないという点にも通ずるが「料金」が高いこと。トヨタの公式サイトでも「水素価格は1,210円〜1,760円/kg(税別)で計算」と説明があり、展示した水素カートリッジについても「今のところ1本数千円で貸し出すようになる想定。それがマネタイズできるかと言えば難しいところ」と苦笑い。今回は調理器具や発電機として展開しているが、「『水素じゃないとダメ』という特別な用途があれば高くても使えると思う。それがどこまでニーズとしてあるのかというのが最終的な問題ですよね」と課題も見据えた。

 今後の目標については「2、3年後には事業として使えるようにしたい」と設定。「水素ってサプライチェーン(供給網)を全部つながないとビジネスにならない。なので水素をためて、使う直前まで全部トヨタがつないだ。そこからの使い先を、興味のあるメーカーさんも一緒に入って出口を広げてもらう。一緒に盛り上げながら需要が増えれば結果的に水素ステーションも増えるし、コストも下がるし、タンクも量産できればより安い値段で全て使っていけるというサイクルを広がる。それを車両に戻すため、そういう寄り道をしているところです」と力説し、近々でも「来年ぐらいからは興味のあるメーカーさんにレンタルしてもらって使ってもらう動きは取る形です。モノはあるので、使いたい場所に持って行けば使える状態にはあります」と話した。

よろず〜の求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース