1993年に発売された「ポケベルが鳴らなくて」(歌手:国武万里)は、当時のオリコンランキングで最高7位に入ったヒット曲だ。32歳差の不倫関係を描いた同名のテレビドラマも当時大きな話題となった。最近の若い世代にはポケベルがどんなものなのか分からないかもしれないが、当時の人たちであればポケベルにまつわる数々の思い出を持っているのではないだろうか。そんな懐かしの通信機器・ポケベルについて振り返ってみよう。
ポケベルの元になった無線呼び出しサービスが開始されたのは1968年で、当時は日本電信電話公社(現:NTT)によって提供されていた。サービス開始当初は着信音を鳴らすだけで、数字などのメッセージ送信はできなかったものの、営業職を中心にビジネスの場で使われるようになった。
1987年になると数字を表示できる機能を持った端末が発売され、ビジネスシーンだけでなく一般の人にも使われるようになる。次第に数字を使った語呂合わせのメッセージが広まり、ポケベルにメッセージを送信するために公衆電話を使いたい人が長蛇の列を作っていた程の人気だった。
では当時使用されていた数字による語呂合わせは、今の若者が見たら理解できるだろうか。いくつか具体例を紹介する。
・4649
答えは「よろしく」で、メッセージの最後によく使われていた。この語呂合わせはポケベルを知らない人でも比較的簡単に読めるのではないだろうか。
・114106
当時恋人がいた人はよく使用していたのではないだろうか。ポケベルを使って「あいしてる」という愛情表現はこのように書かれていた。数字の1をアルファベットのIと置き換えて「あ」、10で「て」、6で「る」と読んでおり、全体を分解すると「1、1、4、10、6」で「あ、い、し、て、る」と変換できるのだ。
・1052167
これは少し難しいだろう。数字の10が「とお」と読めることから、濁らせて「ど」と読むのがポイントだ。答えは「10、5、2、1、6、7」で「どこにいるの」と変換している。当時はスマホや携帯電話もなかったので、待ち合わせで迷ってしまった時にこの数字が有効だった。
・724106
これまでの例を読んでいる人であれば、もう自然に読めてしまうのではないだろうか。答えは「なにしてる」だ。今でも離れて住む恋人や友人にLINEで「今なにしてるの?」と聞くことがあるが、当時はこの数字が使われていた。
・045105110
0から始まっている数字のため、どこかの電話番号に見えるが、答えは「おしごとふぁいと」と読む。数字の5の英語読みである「ファイブ」を活用しているところがポイントだ。全体を分解すると「0、4、5、10、5、1、10」で「お、し、ご、と、ふぁ、い、と」と変換できる。
・3738206
最後は地域性がある高難易度問題だ。最初の3738は兵庫県の地名「三宮(さんのみや)」を表している。そして06は「居る(おる)」という方言も駆使しているのだ。
全体を分解すると「3、7、3、8、2、0、6」で「さん、の、み、や、に、お、る」つまる「三宮に居る」と変換される。
ここで取り上げたのは、当時使用されていたものの一部でしかない。読者のなかには「こんな数字も使っていた」と思い出した人もいるはずだ。どんな語呂合わせを使ってコミュニケーションをとっていたか、語り合ってみるのも面白いのではないだろうか。