「財閥X刑事」から「涙の女王」まで 時代が変化しても韓国ドラマに〝財閥〟ジャンルが多いのは理由があった!

椎 美雪 椎 美雪
「涙の女王」は財閥3世で百貨店の女王と、スーパーマーケットの王子が織りなす夫婦のめまぐるしい危機と、奇跡のように再び始まる愛の物語(出典:tvN)
「涙の女王」は財閥3世で百貨店の女王と、スーパーマーケットの王子が織りなす夫婦のめまぐるしい危機と、奇跡のように再び始まる愛の物語(出典:tvN)

 韓国では1月にスタートしたドラマ「財閥X刑事」、2月末スタートの「予期せぬ相続者」、3月にスタートしたばかりの「涙の女王」と、財閥がテーマの作品が並んでいる。

 韓国ドラマといえば〝財閥〟はお決まりのテーマと思われるが、現代の視聴者には親しみやすさが重視されているといい、乱立する財閥ジャンルドラマに、現地では疑問が投げかけられていると、韓国メディアの韓国日報が報じた。

 しかし実のところ、財閥を扱った作品は興行成績が良いと、同メディアは記述する。

 「品位のある彼女」(2017年)、「MINE」(2021年)などを世に生み出した脚本家、ペク・ミギョン氏はかつてある番組に出演し、財閥を扱った物語について「お金がある人たちは生計の悩みがなくて、お金について困っている人たちとは違う」「人間の欲望と姿を、お金とは無関係な状況から始めるために、財閥家を背景に書くことがある」と見解を示していた。

 財閥家はその背景の特性上、富と時間が自由である。そしてキャラクターのファンタジー的要素は、ハイパーリアリズムよりも常に人気が高い。これは日々生計を心配し、仕事に追われて食事もまともにとれないキャラクターよりも、楽しそうに遊んで食べて、度胸のあるキャラクターが好まれることを意味しているというのだ。

 また現代の財閥は過去とは違い、神秘主義を脱ぎ捨て、大衆と緊密にコミュニケーションを図るという変化を見せている。注がれる関心の中、何を食べて何を着ているか、SNSで詳細に公開しているのである。このような点を、積極的に投影したのが「財閥X刑事」のアン・ボヒョン演じるジン・イスだ。劇中、イスは財閥の日常が気になり、真似したいと願う人々を養分にしながら、SNS上でスター扱いされている。

 そして何より、ドラマ制作会社の立場からすると、貧しい主人公よりも、裕福な主人公に協賛を提供する方が、視聴者へ訴求するには説得力があるというのが本音だという。

 近年も変わらず財閥ドラマが多く制作されるのは、視聴者の「『未完成』ではなく『完生』を見て代理満足したい」というニーズを、正確に把握した結果のようだ。

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