「葬送のフリーレン」小学館漫画賞受賞 審査の島本和彦氏が絶賛「どのキャラクターも深い!」

山本 鋼平 山本 鋼平
「葬送のフリーレン」(原作・山田鐘人、作画・アベツカサ)」(原作・山田鐘人、作画・アベツカサ、小学館)単行本11巻の書影
「葬送のフリーレン」(原作・山田鐘人、作画・アベツカサ)」(原作・山田鐘人、作画・アベツカサ、小学館)単行本11巻の書影

 小学館の第69回小学館漫画賞の贈呈式が1日、都内のホテルで行われた。「葬送のフリーレン」からは原作者の山田鐘人氏は欠席したが、作画担当のアベツカサ氏が出席し、受賞の感謝を述べた。審査を担った漫画家の島本和彦氏は講評を熱く語った。

 日本テレビ系でアニメが放送中で、魔王を倒した勇者たちの〝その後〟を起点に、エルフである主人公フリーレンを軸に新たな仲間たちとの旅が描かれるファンタジー作品。

 島本氏は「魔王が倒され、勇者は寿命が尽きて死んでしまう。どうやってここから物語を引っ張っていくんだろうと、誰もが不審に思った第1話から、これほどワクワクする展開になったことにビックリした」と構成の巧みさを指摘し、「構造的に考えると、今までの漫画はもうオワコンだよね、全ての漫画は終わりました、これからはこれです、と宣言されたよう。漫画界は2週目に入るのではと考えさせられるような、鋭い批判力も込めたすごい漫画です」と続けた。

 さらに「キャラクターの一人一人が深く練り込まれている」と語り出した島本氏。何周もアニメ、原作を見返していると話し「シュタルクがフリーレンをおんぶするところで、フェルンが『エッチ』と言うところがある。これはシュタルクがフリーレンという女体をおんぶすることに対して『エッチ』と言った、という理解が、最初の段階だったが、〝おや、違うのではないか〟と思い直した。シュタルクにフリーレンを預けたくない、というフェルンに嫉妬心が生まれ、その嫉妬心を隠そうとして『エッチ』という言葉が出てきたのではないか、と思い至った。おやおや、このセリフは深いぞと、2周目は他のキャラクターも深いんじゃないかと考えて読むと、どのキャラクターも深い!」などと、その魅力を語った。

 続いてマイクの前に立ったアベツカサ氏は、関係者への感謝を述べ「2018年の10月、初めて1話目のネームを読み、とても美しい物語だな、描いてみたいなと思いました。しばらくしてフリーレンのキャラクターを描いてみました。その絵を山田先生が気に入ってくださり、作画させていただくことになりました」と経緯を語った。「このような賞をいただくとは想像していませんでした。とてもうれしいです」と喜びを語り、読者、アニメスタッフ、連載先の「少年サンデー」関係者らへの感謝を繰り返し述べていた。

 ほかに、松井優征「逃げ上手の若君」、絹田村子「数字であそぼ。」、稲垣理一郎原作・池上遼一作画「トリリオンゲーム」が受賞。今年度から漫画文化の多様さを鑑み、昨年までの「児童向け部門」「少年向け部門」「少女向け部門」「一般向け部門」の各部門が廃止された。受賞者には正賞としてブロンズ像「みのり」(中野滋作)、副賞として100万円が授与された。審査員はおのえりこ、恩田陸、川村元気、島本和彦、高瀬志帆、ブルボン小林、松本大洋が務めた。

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