能登半島地震の被災地で悩ましい「ペット問題」 2次避難先の大半でもペット同伴不可、対策はあるのか?

深月 ユリア 深月 ユリア

 能登半島地震の発生から1か月以上が経過したが、避難先での「ペットとの共生」が困難であることが、被災地での数ある懸案事項のうちの一つとして、看過できない問題になっている。ジャーナリストの深月ユリア氏が石川県獣医師会や石川県危機管理課の担当者を取材し、現状と今後の対策について話を聞いた。

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 複数の報道によると、石川県珠洲市で1月18日に発生した火災で、集落から離れたところにある納屋が全焼し、19日に60代男性の遺体が発見された。親族や職場の同僚の話によると、男性は犬と猫を飼っており、「ペットがいるから避難所に行けないため、納屋で生活していた」という。

 避難時に「家族」であるペットをどうするか、実に悩ましい問題だろう。SNSの情報によると、「猫と避難しようとしたら、『猫は屋外に出してください』と言われて避難できず、倒壊した建物に戻った」という飼い主もいるという。

 石川県獣医師会は1月15日から、能登半島地震で被災者のペットの受け入れをしている。県内61か所の動物病院で1か月間、ペットを無料で預けられるという。

 被災地のペットの扱いはどのようなものなのか。石川県獣医師会によると、「石川県内にペットを受け入れてくれる避難所は複数ある」という。 例えば、珠洲市の飯田公民館にはNPO法人日本レスキュー協会の協力の元、ペット同伴できる専用避難所が設置されたという。

 石川県は2020年から災害時のペットとの同伴避難を呼び掛けている。同県危機管理課によると、県内の指定避難所894施設のうち94%にあたる839施設が敷地内にペットを避難させられる。だだし、施設内にペットを避難させられるのは25施設のみで、多くは避難所の玄関や屋外にキャリー・ゲージを置く形になってしまう。寒さに弱いペットの場合、命の危険も伴うだろう。

 また、ペットが施設内に入れる避難所でも、一般の避難所には動物が苦手な人もいる。石川県獣医師会によると、「飼い主が周りに気をつかって避難所の寒い廊下で過ごしている、という話もあった」という。

 そして、最大の問題として、同会の担当者は「2次避難所のホテルや旅館の大半はペット同伴ができない」と指摘した。石川県は災害関連死を防ぐために、被災者に県内外のホテルや旅館に移ってもらう「2次避難」を進めているが、その大半はペットと宿泊ができないのが現状だという。

 石川県獣医師会は 「人間のためにも、動物のためにも、(先述の)『被災者のペットを受け入れる活動』を始めた」と改めて説明した。 2月3日時点で、同会は161匹(猫88、犬58、ウサギ2、鳥13 )の動物を保護しているというが、担当者は「その多くが『二次避難』の飼い主さんのペットで、今後、さらに増えるでしょう」と予想した。

 それだけ多くの動物の世話をすることは、さぞかし大変なことだが、石川県は仮設住宅建設を進めており、同県危機管理課の担当者は「それまでは頑張りたい。昔と違って現在は仮設住宅の多くがペットと暮らせるはず」と意欲を示す。一刻も早く、人間もペットも落ち着いた生活を取り戻せるとよいのだが。

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