映画界の大御所俳優アル・パチーノ(83)は、映画『インソムニア』の撮影現場で、クリストファー・ノーラン監督(52)から渡された演技についてのメモを否定したという。2002年のスリラー作でノーラン監督は、アルへの指示を紙に書き渡したものの、自分の望むことは既に「毎日」やっているが、「君の目には見えない」と言われたそうだ。
ノーラン監督はアルへの注文内容について具体的に明かさなかったものの、ロサンゼルス・タイムズ紙とのインタビューでこう語った。「彼は私に言ったんだ。『それを私はすでに毎日やっている。目には見えないけど』ってね。私はそれを探した。そうしたら本当に、そこに存在して、『オーマイゴッド』という感じだった」
ノーラン監督の目には、撮影現場ではアルの演技の細部を拾うことができなかったものの、映像を見返すことで、初めてその演技を完全に理解することができたという。
核爆弾を開発した物理学者ロバート・オッペンハイマーを描いた最新作『オッペンハイマー』の公開が控えているノーラン監督は、主演のキリアン・マーフィーとも似たような撮影現場での経験をしたという。
「偉大な映画俳優にはそれができる。キリアンにはそれがあった」「キリアンは自分のイコノグラフィー(図像学)をとても意識していた。とても芝居がかっていて、自己認識度が高かった。彼がダンディというのは単純すぎる言い方だが、彼は自分自身の象徴的な肉体的イメージを作り出す力を知っていた」
「(人類初の核実験)トリニティ実験もそうだが、オッペンハイマーが量子領域を視覚化した初期のイマジネーションも、ある意味で脅威的でなければならなかった。その場にいた者にとって、トリニティ実験は最も美しく、同時に恐ろしいものだった。そしてそれこそが、私たちが目指したものだったんだ」