【漫画】「誰が陰謀論者だよ!?」切なく胸に刺さる母と息子の分断を描いた衝撃作 担当編集者が語る

橋本 未来 橋本 未来

 いつも優しく穏やかだった母親が、コロナ禍をきっかけに突如として“陰謀論者”に急変し、真実が定かではない怪しげな情報を次々と息子に送り付けるようになっていく。次第に人間性も変わっていく母は孤立してしまい、家族の絆が分断されてしまう……。互いが信じる正義のために、家族や人間関係の繋がりがいとも簡単に崩れ落ちていく切ない現実を描いた、コミックエッセイ『母親を陰謀論で失った』(KADOKAWA)。

 近年の出版業界で、とりわけ話題作が次々とリリースされるコミックエッセイの中で、出版社のKADOKAWAが23年2月に立ち上げた「シリーズ立ち行かないわたしたち」の第一弾として刊行された『母親を陰謀論で失った』(原作:ぺんたん / 作画:まきりえこ)が大きな反響を呼んでいる。現実の出来事や人物から着想を得たコミックエッセイ形式の“セミフィクション”と呼ばれる手法で描かれた本作は、コロナ禍以降に世間で注目された“家族と陰謀論”をテーマに描かれ、そのリアルさと胸に迫る切ない描写の数々が読者の共感を集めている。

 そこで今回は、このシリーズの立ち上げに関わり、本作の編集担当者でもあるKADOKAWAの吉見涼さんに、出版に踏み切ったその理由から読みどころについて話を聞いた。また、この記事では、作品から一部を特別に公開する。

根底にあるのは、人間関係の脆弱さと分断

 ある種、物議を呼びそうなテーマである本作を、なぜ吉見さんは書籍にしようと考えたのだろうか。その根底には、多くの人間に響く普遍性と意義があったからだと話してくれた。「陰謀論で家族を失うというセンセーショナルで特殊な話でありつつも、根底には『人間関係の脆弱さ、分断』という人々の生活に根ざしたテーマがあると感じたからです。本書においては、コロナ禍の情報リテラシーによって、親子の分断が生まれてしまうのですが、これは陰謀論だけに限った話ではないと思います。

 もし家族やパートナー、友人など、身近にいる大切な人が“何かを信じて”大きく変わってしまった時、どう向き合うべきなのか。他人事ではなく『わたしたちの物語』として想像できる作品づくりをコンセプトにしている、本シリーズでこそ出す意義があると思いました」

 そして、本書の魅力については、「この本は、陰謀論の真偽を問うものではなく、あくまで母親と息子、家族の人間ドラマをメインに描いています。なので、「陰謀論者=悪」という描き方はしていませんし、私自身も人間の数だけそれぞれの正義があると思っています。とくに後半で母親と再会するシーンがあるのですが、そこでのやりとりはお互いの正義がぶつかり合い、切なく胸に刺さるものがあります。きっと最後まで読んでいただければ、『息子がいたたまれないけれど、母親も責めることができない』、そんな複雑な読後感になっていると思います」と、読みどころを教えてくれた。

 たとえ家族であっても簡単に分断されてしまう現実を描いた本作。そのリアリティこそが、多くの共感を集め、今も続々と新たな読者を増やし続けている。

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