謎多き仕事のひとつとして知られる、夜逃げ屋。これまで何度か、映画やドラマなどの題材としてその実態が取り上げられてきた中で、今回紹介する作品『夜逃げ屋日記』は、そうした作品と比べ、臨場感が抜きん出ていると評判だ。家庭内暴力から逃れようとする母子や、虐待する家族と別の人生を歩もうとする青年など、目を背けたくなるような人間ドラマを丁寧に描くことで、その生々しいほどのリアルさが際立つ作品となっている。
この作品を描いているのが、漫画家の宮野シンイチさん(@Chameleon_0219)。自身が夜逃げ屋として働いた経験を活かしTwitterにてこの作品の連載を開始した、謎に包まれた自称“カメレオン”作家だ。今回は、そんな宮野さんご自身にこの作品の魅力について話を聞いた。
「漫画にできない話は、ここでもお話できません!」
まずは、宮野さんのプロフィールについて触れておきたい。Twitterのプロフィールには、“漫画原作者志望だったけど、連載が取れず夢散ったカメレオン”という謎めいた紹介が書かれているが、実際はどのような経緯でこの作品を描くようになったのだろうか。
「なんと、漫画雑誌で新人賞を獲ったことも、どこかの媒体で短編が載ったことも一切ない、本当の本当に経歴が何もないんです。悲しいですね。なので、突然自分のエッセイ漫画をTwitterにあげ始めた謎のカメレオンだと思ってくれたら、1番正解に近いと思います。また、この作品を描くようになったきっかけは……おそらく第90話くらいで描くことになると思うので、詳しくお答えできません。しかし、90話まで続けられるんでしょうか。う〜ん!がんばります!!!」
原作者を志しながら、漫画家として不遇の時期を送る中で、現在の創作スタイルに辿りついたようだ。とはいえ、作画はプロのような筆致で、どこかで漫画家アシスタントなどの経験があるのかと質問をすると、「実は自分に絵を教えてくれた先生がいます!その人は漫画家ではないのですが、絵の描き方がわからず困っているワシに、月額5000円で週1、2回、絵画教室を開いてくれました。その絵画教室で、デッサンや平面構成を1年くらい教わったんです。それでも自分は絵が上手く描けないので、作画の時はとにかく“いつ、どこで、誰が、何をしている”のか、“同じ構図をできる限り連続させない”という2つのことだけを意識し続けています」と、そのこだわりを教えてくれた。
「若い頃に出版社に持ち込んだけど捨てられまくった作品たちをなんとかして形にしてあげたいと、ずっと思っています。ただ、それよりもまずは『夜逃げ屋日記』を描き切り、いつかは単行本化したいですね。また、漫画にできない印象的なエピソードもありまして……。ここでもまだお話はできませんが、できる限り漫画にしますので楽しみに待っていてください!」と、将来の展望について語ってくれた宮野さん。漫画化できない過激なエピソードに期待しながら、今後の活動に期待したい。
■宮野シンイチさんInformation
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