世界の歌姫、ホイットニー・ヒューストン。別名“THE VOICE”と呼ばれた類稀なる美声と圧倒的な声量を持つ彼女が世を去って約10年。そんな彼女が主人公となる映画『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』が12月23日に公開された。
この映画のプロデューサーは、ホイットニーをスターダムにのし上げた張本人であるレコード会社社長クライヴ・デイヴィス。脚本は、クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーの伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』の脚本家アンソニー・マクカーテンが担当し、ホイットニー本人の歌声を使用し、数多くの代表曲とライブシーンをスクリーンで堪能できる作品となっています。
主人公ホイットニー役には『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』でジャナ役を務めたナオミ・アッキーが抜擢され、当時と同じヘアメイクと衣装を身につけ、『ボヘミアン・ラプソディ』のムーブメントコーチの指導のもと、ホイットニーそのものと言えるパフォーマンスで冒頭から観客を魅了。更にクライヴ・デイヴィス役には『プラダを着た悪魔』で知られるスタンリー・トゥッチをキャスティングし、名曲「すてきなSomebody」をはじめとしたヒット曲の数々が2人の共同作業により誕生していたことが描かれています。
80年代に鮮烈なデビューを果たし、二枚目のシングル「すべてをあなたに」から7曲連続、全米シングル・チャート1位という偉業を成し遂げ、ケビン・コスナー共演で『ボディガード』で主演を果たし女優に挑戦、グラミー賞6回ほか400を超える受賞歴でギネス世界記録に認定されるなど、まさにトップ・オブ・トップのアーティスト、ホイットニー・ヒューストン。そんな彼女は、夫のR&B歌手ボビー・ブラウンによる暴力や薬物依存などスキャンダルにも事欠きませんでした。
2019年にはホイットニー・ヒューストン財団公認によるドキュメンタリー映画『ホイットニー〜オールウェイズ・ラヴ・ユー』も公開。しかしながら本作では、別の人物が演じることで彼女の細やかな感情の機微や知られざるエピソードを描け、天から授かった歌声で世界中を魅了したホイットニーの人物像を浮き上がらせることに成功。
今年は、1986年に公開された『トップガン』の続編『トップガン マーヴェリック』の爆発的大ヒットや1985年に日本公開された『ロッキー4』を監督・脚本・主演も務めたシルヴェスター・スタローンにより再構築された『ロッキーVSドラゴ : ROCKY Ⅳ』が公開されるなど、80年代ブームと言われています。
更に映画化されたミュージシャンではフレディ・マーキュリー(『ボヘミアン・ラプソディ』)やエルトン・ジョン(『ロケットマン』)、そして伝記映画の製作もニュースになっているマイケル・ジャクソンも80年代を駆け抜けたアーティスト。それらを考えるとホイットニーを始めとする世界的レジェンドを多く輩出した年代だったからだと、本作を観て実感せずにはいられませんでした。