M-1初審査員・山田邦子が語るウエストランドの勝因 来年の審査員は引き受ける?

福島 大輔 福島 大輔
審査員として初参加したM-1グランプリを振り返る山田邦子=東京・新橋(撮影・伊藤笙子)
審査員として初参加したM-1グランプリを振り返る山田邦子=東京・新橋(撮影・伊藤笙子)

 漫才日本一決定戦「M―1グランプリ 2022」で初めて審査員を務めたタレント・山田邦子が、番組生放送終了直後によろず~ニュースの取材に応じ、優勝したウエストランドの勝因を熱く語った。また、女性芸人として2009年のハリセンボン以来13年ぶりの決勝進出を果たしたヨネダ2000などの戦いぶりにも触れ、エールを送った。

 強烈な〝毒舌漫才〟で優勝したウエストランド。山田は「ずっと彼らを見ていて、なんか一番『来ないな』と思って人たちたっだ」と苦笑いしつつ、「くじ運が良かったのか悪かったのか、ラストに出たでしょ。それで次(最終決戦)がトップ。続けてやったのは良かったんですかね」と語った。ファーストラウンドの出番は最後の10番目だっただけに「待ってるのも嫌だったと思うんですよ。他がドッカンドッカンとウケてるのも聞こえてきますしね。それでも伸び伸びやってたし、力を出し切った。そのメンタルが一つの要因だった思いますね」と、厳しい条件に耐えたことを称賛した。

 その上で「今はコンプライアンスが強調される時代ですけど、そのネタでいくんだな…っていうところですかね。みんなが避けて通ったことを、『この手があったのか!』っていう感じ」と、独特の手法に対しても高評価。「毒舌だけど、みんなが嫌な気持ちにならなかったんですよね。みんなが大体おかしいな、ここはちょっと変だなと思ってるようなところを突いてきてた。この後もしかすると、始末書を書くようなこともあるかもしれないけど、でもすっきりした、スカッとしたところもあるんですよね。そこかな?」と分析した。

 ウエストランドが、所属事務所・タイタン主催のライブなどで磨いてきた渾身のネタ。山田も「彼らの技術でしょうね。お客さんを巻き込んでいきましたよね。あれはYouTubeとかじゃない。お客さんの前で、見ながらやったんでしょうね。『これイケてる?受けてる?』というのを感じて、うれしかったと思いますよ」と心中を推し量った。さらに「ああいうネタは、秘密のライブであればあるだけウケるでしょうね。それを公に出してきたっていうのは、彼らももう勝負ですよね。いよいよもう、同輩や後輩やらが優勝してきちゃってるんだから、もう命かけてきたんじゃないですかね」と、2人が見せた〝覚悟〟にも触れた。

 「他人を傷つけない笑い」が主流となる中で、大勝負に出た2人に「そのぐらいの毒はね、今は何かっていうと、かばいすぎですよね。芸人の中にも、いちいちいち言う人いるんですよ。でも、いろんなことが個性だからね。そういうところかな。うん。ちょっと尊敬します」とうなずいた。

 デビューから42年、常に舞台に立ち続けている山田だけに、「瞬間の空気」や「出番順」によってウケ方が一変することは誰よりも痛感している。「順番とか、その空気にハマるハマらないっていうことの大きさはありますね」としみじみ。「その意味では、ヨネダ2000ですよ。惜しかったな…。すごくいいデキでしたよ。彼女たちも、会場の空気を変えましたよね。みんなが『何だろう?』ってなってたから、爪痕を残すっていう言葉が今流行ってるなら、十分残したんじゃないかなと思いますね」と、頼もしい後輩女性芸人に期待を寄せた。

 さらに自身の経験として「私は浅草演芸ホールとかでは、ヨネスケさんの後の出番が多いんです。ヨネスケさんは非常に安定していて、お客さんを温めてウケて終わってくれるんで、時間も守るし、次が出やすい。私の後は神田伯山が多いんですけど、伯山の後だったら無理。もうね、ドッカンドッカン受けるんですよ。で、クールに去って行きますから。(桂)宮治の後も出づらいかな。すごいことやってきますから…。でも、まあ全体的には面白ければそれでいいということなんですけど」と明かした。

 自身は学生時代は漫才をメーンとしていたが、プロになってからはピン芸人一筋。「優勝したウエストランドでもネタが飛んだからね。やっぱり緊張してるんですよ。それでもずっとコンビを組んでる、ずっと練習してると、練習は裏切らないです。今日は相方の調子悪いなとか、今日はやけにキレキレたなとかも、十分わかってやってるんですよね」「やっぱり相方がいればなと思ったこともあるし、今日はちょっと羨ましいなって思いながら見てましたね。恋人とも違う。夫婦でもない、大親友のような分身のような、相方ってそういうものですよね。感動的でした」と、漫才コンビの真剣勝負に触れた一日を振り返った。

 来年も審査員をやりたいかとの問いには、否定はしなかった一方で「会場にね。大林素子がいて、真正面からね。上の段から見てたんですよ。ただのお客さんで。私も正面から見たいんですよね。審査員は斜めから見るでしょ。モニターをもらってますけど、生の空気感味わうには、正面から見させていただきたいです」と、含みを持った答えに。「今日のお客さんの、あの波打つような受ける感じがお茶の間に伝わったかな?すごかったですよね」と、やはり興奮が冷めやらない様子だった。

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