日本列島を縦断して現代の怪談を収集し、そこに解説を加えた新刊「列島怪談 あなたの地域の一番怖い話」(宝島社)が24日、発売される。著者は2020年4月に開始したYouTubeチャンネルの登録者が10万人を突破した太田プロダクション所属のお笑いコンビ「ナナフシギ」。天性の霊感を持つという大赤見ノヴ(43)と怪談の知識が豊富な吉田猛々(44)に話を聞いた。
コンビ結成から4年。大赤見はフジテレビ系「人志松本のゾッとする話」などの番組で自身が体験した心霊ネタを披露し、吉田は〝日本一怖い怪談の語り部〟を決めるコンテスト「怪談最恐戦」(竹書房主催)で昨年準優勝した実績がある。2人の「怪談芸人」がYouTube番組「ナナフシギチャンネル」で紹介した怪談を厳選し、北海道から九州・沖縄まで7地域に分けてまとめた初の単著となる。
全27話。関東地方からは東京都の「呪怨の家」や神奈川県の「廃病院」、東北地方では宮城県の「異形の者」、近畿地方では奈良県の「呪いの人柱」、九州地方では福岡県の「噂のトンネル」…といった「怖い話」が並ぶ。投稿者、友人や知人から聞いた話、大赤見が体験した話も含まれ、各エピソードの後に「フシギ解説」として両者のコメントが添えられている。
科学的な根拠がなければ信じられないという読者でも、俯瞰したスタンスで説明、分析された解説によって腑(ふ)に落ちる部分があり、〝怪談〟といわれる物語の中に人間の精神世界や心の闇、その地域の土着的な文化にもつながる要素なども感じ取ることができる。
-怪談を地域別に分類して気づいたことは。
吉田「例えば『即身仏の伝説』は霊山とされる山形県の月山(がっさん)など、東北地方をイメージされると思うんですけど、意外にも東京23区内にあったりした。一方で、四国や中国地方の『赤い着物の女』の怪談は、各家庭で蛇を飼うことで家を守ってもらうという風習が背景にあって、それは関東にはあまりないなど地域の特色もある」
-本書の中で自身の琴線に触れたネタは?
大赤見「僕個人としては、幽霊というよりも『人の念』って怖いなと思ったのが、大阪のテレビ局に巣くう〝魔物〟の話。そういう場所って絶対あるし、人の念が異形めいた魔物みたいになるのってすごく怖いなと思いますね」
吉田「中部地方の『鏡と石』は祖先がずっと見守ってくれて、自分の事を助けてくれたという、オーソドックスながらも驚きのある話で、初めて怪談を読む人にも分かりやすく入っていけるかなと。地域の風習みたいなことも学べ、読むことで知見になる」
-ところで、どういう意識を持てば心霊体験ができるのか。〝努力〟して可能になるものか。
大赤見「努力ではどうにもならないです(笑)」
吉田「血筋で見えるとか言われますね」
-それでいうと、本書の冒頭で「大赤見(おおあかみ)」という姓が「呪われている」と父親から伝えられたことが原点になったと書かれている。
大赤見「はい、『大赤見という名字は呪われている』と元僧侶のオヤジに言われたのが中学の時でした。でも(心霊的な)経験は小学生の時からしています。大赤見の血が入っている親戚全員、霊感強いですから、やっぱり血筋なのかなと思います」
吉田「僕には心霊体験がないのですが、小さい時からオカルト全部が好きでした。水木しげる先生の『妖怪大図鑑』を読んで、妖怪がいるなら探してみようと家の近所を探し回ったり。相方には体験談があって、僕は見ることはできないけどオカルトは好きということで、このコンビは始まっています」
-第2弾があるとすればどのような切り口になるか。
吉田「例えばトンネル、病院、学校などの『場所』縛りで第2弾ができたらいいなとは思いますね」
大赤見「僕の中では、どんなお題出されてもできる自信はあります。ネタは尽きない。自分自身がアップデートされているので大丈夫です。今後もいろいろとやっていきたい」
-本書への思いを。
大赤見「タイプの違う2人が出した本で、全ての人が楽しめるという自負がある。興味を持って手に取っていただけるとすごくうれしいです」
吉田「(心霊現象が)見える側(大赤見)、見えない側(吉田)、双方の視点で描かれていると思うので、ちょっと怖いのに興味があるくらいの人、怪談の内容に厳しい人でも楽しんでいただける自信作です。ちなみに、ナナフシギの『ナナ=7』から本書では日本列島を7つに分けたわけですが、『列島=レットウ』という言葉には、芸人として20年くらい、くすぶっていた『劣等生』みたいな意味での『レットウ』も含めています」
大赤見「含めてないって!」