とある1ページ漫画がTwitterで大きな反響を呼んでいる。何気ない日常を切り取ったものから、とある漫画のオマージュまで。あの手この手で繰り出される作品は、これまでのギャグ漫画とは一味違う作風が人気となり、次々と数万いいねを獲得している。
作者は、『ろこぽん』や『ハズレスキル「逃げる」で俺は極限低レベルのまま最強を目指す』(共に、ヤンマガWEB)などで連載を行う、漫画家の雪永ちっちさん(@yukinagasub)。今回は、従来の笑いとは一線を画すTwitterで発表している作品の魅力と共に、その作品も紹介する。
デビューからすぐに、商業連載獲得の偉業
東京理科大学工学部(プログラミング専攻)を卒業後、新卒でキヤノングループに就職後、外資系ITメーカーのヒューレット・パッカードでセールス・マーケティングなどを担当していた雪永さん。華々しい経歴を持ちながら、漫画を描くようになったのは、ひょんなきっかけだという。
「会社がコロナウイルスの影響で、全社員在宅勤務となりました。これが漫画家になったきっかけといえます。通勤時間は無くなり、仕事も効率的に進みましたが、その結果暇だけどやることない……という状況になりました。そのとき友人が、『液タブ使ってないし、これで暇潰せば?』とお古の液タブをくれました。無料お絵かきソフトを入れ、フィーリングで何となく漫画を描いているうちに、折角描いたのだから誰かに見てほしいと思うようになり、5ch(旧2ch)に漫画を投稿し、それが何度かまとめサイトに載りました」
持て余した時間を潰すために始めた漫画投稿がいつしか注目を集めるようになったある日、講談社の漫画担当者から連絡が届いたという。「その方から、『商業連載に興味はありませんか?』とお声がけをいただきました。全く知らない世界でしたので、ワクワクする反面、少し悩んだのですが……。幸運なことに、それから約1年後に、商業連載を2本始めることになったんです」
「面白い」に、何をプラスするか。
Twitterに投稿されている作品はどれも反響が凄まじい。13万いいねを筆頭に、数万いいねを獲得した作品がズラリと並んでいる。“バズる”常連となっているこの作品は、どのような工夫から生まれているのか。
「僕より、はるかに面白いネタを投稿する人は数え切れないです。ただ、“面白い”だけじゃダメで、つぎの4点を意識しながら投稿をしています。①文章含め10秒以内(できれば5秒以内)に笑えること。②万人になじみ深いネタにすること。③ユーザがツッコミやすい内容にすること。④わかりやすいこと(解釈に幅を与えないこと)。これらを意識すれば、タイムラインの流れが早くても多くの方々の目に留まりやすく、またRTで見つけてくれたユーザからも興味をもたれやすいです」
また、ユーザーとの交流にも意識を向けているそうで、「飛んできたリプライには、7割から8割は返信するようにしている」と話す。反応してもらったことに対して、しっかりと感謝の気持ちを伝えることが、熱狂をつくる一因となり、バズるポイントになるそうだ。
こうした冷静な分析から生み出された作品は、次々とバズりながら、より多くの人々に読まれる作品となっていく。当然、次の展開についても、虎視眈々と計画していると思いきや、「ありません。ただ、一人でも多くの人を笑顔にしたいです」と話してくれた、雪永さん。理系的な冷静な分析力と、人の思いに根ざした作品性。その両方を持っているからこそ、大勢の人々から支持される作品を生み出せるのだろう。
■■雪永ちっちさん情報
■メインアカウント(告知用)
@tittiisme
■サブアカウント(イラスト用)
@yukinagasub
■「ろこぽん」3巻発売中(2022年7月20日より)
https://onl.la/AdisYjB
■週刊ヤングマガジン本誌にて新作連載を開始予定(2023年1月)