6月3日、筆者は芸能界、音楽界の大先輩であるお二人にインタビューした。
一人は1962年のデビュー以来「あしたのジョー」など数々のヒット曲を持ち、ザ・ビートルズ来日公演の前座など歴史的なステージに立った尾藤イサオ(78歳)。もう一人は1977年に兄弟デュオ「狩人」として「あずさ2号」で鮮烈なデビューをはたし、今なお音楽番組、バラエティー番組などで多彩な活躍を見せる高道(62歳)。
東京・浅草の東洋館で開催された「尾藤イサオ&高道 ジョイントライブ」というイベントに招待され、そのリハーサルの合間にお話を聞いたのだが、何十年という年月を芸能界で生き残ってきた彼らの言葉は2年前にようやくシンガーソングライターとして全国デビューしたばかりの筆者にとって大きな重みがあるものだった。
「もう60年以上歌手をやってるのに、仕事の前になると緊張して『ちゃんと歌えるかな?歌詞を間違えないかな?』と心細くなっちゃう。自分でも可愛いって思うんですよ(笑)」(尾藤)
「ヒット曲は宝物だけど、それしか歌わなくなって『懐メロ歌手』と言われるのが一番嫌。積極的に新しい音楽を聴くようにして、気に入った曲はライブで歌っています」(高道)
スターだから、大物だからとかそんな素振りは全く見せず、あくまで謙虚に仕事に向き合っている二人。はるか年下の筆者に対しても優しく丁寧だ。
「(尾藤について)普通の人なら80歳近くになって今回みたいな面倒な仕事はしたくないと思うんですよ。でも尾藤さんはそんなこと言わずに僕が提案することに楽しそうに乗って賛同してくれる。いつまでもチャレンジすることを諦めない姿勢は僕にとってもまぶしいです」(高道)
「僕は舞台に立つしか能がない人間です。今回のライブは高道さんが企画してくれたまたとないチャンス。新曲をやったりタップダンスをやったり、正直『80歳近いのに大丈夫かな?ヤバいんじゃないかな?』とよぎることもあったけど『まだまだ出来る!』と言い聞かせながら練習を重ねてきました」(尾藤)
年齢を感じさせない若々しい二人だが、それぞれ心身ともにフレッシュであり続ける術を自然に身に付けているのだろう。
インタビュー後に観たライブも素晴らしいものだった。エルヴィス・プレスリーやザ・ビートルズのカバーにはじまり、ジャグリングやタップダンス、ものまね、二人のヒット曲…息をつく間もないほど次々に繰り出されるパフォーマンスに、感動したり興奮したり大笑いしたりの2時間。
観客の目線に立って、飽きずに楽しく観ることのできるちょうどいいサイズの構成を考えているのだということが良く伝わってきた。会場を埋め尽くす観客の拍手に包まれながら、汗だくで歌い踊る二人。
「私も50年後に尾藤さんや高道さんのような気持で仕事に向かえているだろうか?」
二人の姿を見ながらずっとそんなことを考えていた。
夢コンサート
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