話題の学生向けジェンダーレス水着 トランスジェンダーに聞く「あれば着てた」「あくまで選択肢の一つ」

ぽすわんのカノー ぽすわんのカノー

学生向けのジェンダーレス水着が登場した。筆者は性同一性障害(体は男性、心は女性)の当事者。上半身裸にならなければならない水泳の授業は、学生当時、苦行だった。それゆえこのニュースは個人的には朗報だった。

参考記事:ジェンダーレス水着が開発された 性の問題に限らず「体形や肌を露出したくない」生徒の思い反映、選択は自由(よろず〜ニュース)

学生時代にこんな水着があれば……筆者は元々、水泳が好きで小学校の頃はスイミングスクールにも通っていた。しかし、思春期を迎え性別の違和感が大きくなるにつれ、水泳が嫌いになってしまった。卒業後に水着を選べるようになってからは、また泳ぐことが好きになった。格好を変えるだけで前向きに水泳の授業が受けられるのだとしたら、ジェンダーレス水着の登場には悪い点が見当たらない。

このジェンダーレス水着について筆者以外のLGBTの当事者たちはどう思っているか気になった。トランスジェンダーの当事者を中心に、3名への聞き取りを行った。

【40代トランスジェンダー女性】

「小中学生の頃に、こういう水着があればきっと着たと思う」

小学生の頃、女性の水着を着たいと思っていた彼女。中学、高校時代は男子校に通っていた経験もある。その当時の思い出から「友人の中には体を鍛えるのが好きで、腹筋を見せつけたい人が一定数いました。もちろん、同性愛的な意味ではなく。少なくともトランスジェンダーで悩んでいる人よりは多いと思います」男子特有の感覚を教えてくれた。

また「女性の中にも既存の水着の方がいい人も多い気がする」と単純に差異を無くす事に対して違和感も覚えたようだ。

◇ ◇

【藤原直さん。40代トランスジェンダー男性、LGBT講演家】

「学生当時、女性らしい体のラインが出るのが嫌でずっと我慢していました。なので、この水着が当時あったら、きっと選んでいたと思います。既存の水着がいい人にとっては、お洒落ではない等の我慢が生じるかもしれません。ただ、学生水着は、授業の為のユニフォーム。差別となりうる要因をなるべく取り除いた上で最低限の機能性だけ担保されてたらいいと、個人的には思います」

近年、学生服にもジェンダーレスなデザインのものが出てきている。セクシュアリティに配慮したさまざまな試みがなされていることに藤原さんは「普段、学生向け講演会などを行う中で感じるのですが、学生へのLGBT対応は現在過渡期です。対話を続ける中で、最終的には男性用、女性用、ジェンダーレス用の3種類から選べるようになると良いと思います」と現場での柔軟な対応を期待していた。

◇ ◇

【月ヶ瀬悠次郎さん。30代ストレート男性「ひめじ芸術文化創造会議」代表】

「辛い思いをしているマイノリティに一定の配慮が為されることは歓迎すべきことだと思います。しかし安直な統一は男性らしさ、女性らしさの否定あるいは多数派の排除に繋がる恐れも。また、性差それ自体に蓋をしてしまうやり方は、マイノリティを含むすべての人々の相互理解とは真逆の効果をもたらすかもしれません。ジェンダーレスデザインは、あくまで選択肢の一つとして取り入れられるべきではないでしょうか」

◇ ◇

LGBT当事者を中心に聞き取りをしたが、決して賛成意見だけではなかった。既存の男性らしさ女性らしさへの配慮も忘れてはならないというのは筆者にとっては盲点だった。

とはいえ、この水着に救われる生徒がいるのは事実だ。またマイノリティについて考える一つのキッカケとなり、SNSやニュースサイトコメントでは様々な意見や感想が出ているようだ。筆者としては、この問題に一石を投じてくれた開発メーカーへ感謝が募る限りだ。

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