アイドルや声優、バンドなど若い世代によるカルチャーの発信地となっている東京・秋葉原で、会場を借りる余裕のない駆け出しの演者を救済する取り組みが始まった。「箱代完全無料」を掲げるライブバーに足を運び、運営側や演者に話を聞いた。
メイドや男装の執事コスプレ姿の若い女性が店のチラシを持って等間隔で路上に立つ秋葉原の中央通り。このメインストリート沿いのビル6階で、6月17日にプレ・オープンした「LiveCafe&Bar テイア」が箱代無料の店になる。
演者たちはライブハウスを借りるため1度に数十万円を払い、ライブ後の「チェキ会」で収入を得る。チェキ会とは、撮ったその場で写真がプリントされるインスタントカメラ「チェキ」を使った、アイドルとファンによる撮影イベントのことで、1枚当たりの価格は500円から2000円ほどという。ライブハウス公演としてのチケット代に加え、チェキの収益も少なければ、会場の「箱代」が大きな負担となる。
同店は「箱代0円」でライブイベントを開催し、演者側は初期費用をかけずにチェキの売り上げが純利益となる。来場客は「3300円(税込)飲み放題」でライブを鑑賞し、そのドリンク代が店側の収益となるシステムだ。
運営会社「フレッサ」の谷淳也社長は「アイドルさんたちはライブハウスを借りるのに20万円、30万円とお金がかかり、ステージを借りるのはハードルが高く、活動の場が限られている現状があります。アイドルさんやタレントさんの収入源として『チェキ会』があり、チェキはアイドルさんによって1枚千円だったり2千円だったりとかで、それは全部、演者さんに還元されて純利となり、運営資金だったり、ギャラになったりするのですが、従来ですと、その日のライブハウス代を払うと、チェキの売り上げでは足りずに赤字で終わった…ということもある。それを続けていたら活動できなくなってくる。そこで、駆け出しのアイドルさんたちが身軽に歌って踊って、チェキ会から収益が取れる場所を作っていこうというのが店のコンセプト。それを秋葉原という街でどうしてもやりたかった」と説明した。
同店の大川拓郎店長は「チェキが純利になるというシステムは今までなかったのかなと自負しております。演者さんの場所選びに当たって、そのリスクや悩みから解放さしあげるお力添えができれば」という。大川店長は「集客的には詰めれば30人くらいのスペースなので、50人、60人と集客できてしまう方には狭いですが、まだ集客力のない駆け出しの方で場所を探しきれないとか、お金がなくて…という方のお力添えになりたい。用途としてはアイドルさんらの誕生日を祝う『生誕祭』とかですね。また、演者さん本人がいなくても、ファンが集まって店内のプロジェクター映像を楽しむ『ファンミーティング』としてもご利用いただけるかなと。情報発信はツイッターがメインになります」と付け加えた。
プレ・オープニングイベントに出演したアイドルの佐藤汐は「私の場合、フレッサ所属の正社員なので、チェキ会があってもなくても、同じ額をいただいているのですが、所属のないフリーの方にとって、いいシステムだと思います。周囲にはフリーの方がたくさんいます」と語る。バブリー系エンタメバンド「ジュリアナの祟(たた)り」のリーダー・江夏亜祐は「非常に画期的ですよね」と評価。既にホール公演を行なう存在となっているが、江夏は「今春から始動した『そのまんま祟り』という、うちの一番弟子ユニットも駆け出しなので、今後、利用させていただけたら」と、後進が活躍する場として期待を込めた。
「ライブをやりたくても会場を借りるお金がない」というハードルをクリアして、「ロハ(無料)で出演してチェキで利益を得る」という流れが定着するか?いずれにしても、演者の魅力にかかっていることに変わりはない。