NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、主人公・北条義時の妻・八重を新垣結衣さんが演じています。その八重が、第21回目「仏の眼差し」において、川で溺れている子供(鶴丸)を助けて、亡くなってしまうという悲劇的展開となってしまいました。
私は八重が川で亡くなるという展開を見た時、三谷幸喜さんの脚本の妙にまたもや唸ってしまいました。「そうきたか」と思ったからです。義時の妻・八重の「退場」をどう描くか私も以前から注目していました。ドラマにおいて八重がなぜ川で亡くなったのか。推測するに、次のような訳、理由が私にはあるように思うのです。
伊豆国伊東の豪族・伊東祐親の娘が八重姫とされていますが、その八重姫は言い伝えによると、川に身を投げて亡くなったとされているんです。源頼朝と恋をし、子供をもうけた八重は、平家方の父・伊東祐親の手により、子供を殺され、頼朝との仲も引き裂かれてしまう。
頼朝は伊東を抜け出し、北条に逃れ、そこで北条時政の娘・政子と結ばれ、子供をもうける。後に北条邸を訪ねた八重は、その事を知り、絶望し、伊豆の真珠ヶ淵へ身を投げて亡くなったという伝説があるんです。つまり、八重は川で亡くなったとする伝承があるんですね。しかも、八重と頼朝の間にできた千鶴丸は川に沈められ殺されたと言われています。
脚本家の三谷氏は、おそらくそこからヒントを得て、今回、八重を川で亡くならせる展開にしたのだと思うのです。今回川で溺れた子供が鶴丸という名前であるのも意味深ですね。
ドラマにおいて、八重は川に入り、溺れている鶴丸を助ける事で、かつて父によって殺された子供(千鶴丸)の事を鮮烈に思い出してしまったのかもしれません。ちなみに、八重が身を投げた真珠ヶ淵の近くに建てられたのが、曹洞宗のお寺・真珠院。そこには、八重姫御堂という、八重姫を祀っている御堂があります。御堂の入り口の右手には、小さな梯子が20ほど置かれています。
元来、これは八重姫が入水した時、せめて梯子(はしご)があったならば助けることができたのにという村人の思いが結集したものとされます。それが今では、願い事が叶えば、そのお礼参りとして梯子を供える習慣として残されているのですね。御堂のなかには、八重姫の木像と供養塔が安置されていました。御堂の中にも、たくさんの小さな梯子がたてかけてあるのが、とても印象的でした。
私は今年2月に伊豆を訪問した時、真珠院、八重姫御堂にも行ってきました。そして、八重姫の木像に手を合わせ、その冥福を祈ってきました。 真珠院では八重姫と書かれたお守り、そして御朱印を購入することができました。伊豆に行った時は、是非、皆さんも真珠院を訪問されると良いと思います。