リオデジャネイロ五輪(2016年)の男子マラソン・カンボジア代表で、お笑いタレントの猫ひろしが3月の東京マラソンに出場して2時間29分10秒で完走した。今年8月で45歳となる猫だが、3年前の記録を上回る〝進化〟で、健在ぶりをアピールした。プロレスラー、特撮キャラクターの収集家などマルチに活動するコラムニストのなべやかんにとって、猫はお笑い芸人の盟友であるだけでなく、共に肩を並べてランニングしていた〝走友〟でもある。「猫は何を考えて走っているのか?」というテーマで、その素顔をつづった。
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3月6日、東京マラソンが開催された。オリンピックで活躍した招待選手とは別の外国人準エリート枠にリオ・オリンピックカンボジア代表でマラソン出場した猫ひろしがいた。
猫との関係は来年で20年になる。その間、私が主宰するお笑いライブにもずっと出続けてくれている。猫がマラソンを本格的に始める前、家が近所だったのでよく一緒に走っていた。
最近、猫のツイッターに「何を考えて走っていますかと聞かれる」的なツイートをしていたが、猫と走っている時はいつも最近観たAVの話をされていた。
「素人ナンパものって書かれていたので撮った監督に電話して確認しました」とか「すごいんですよ。胸がデカくて」とか、興奮すると何を伝えたいのかわからない事が多かったが、ひたすらエロい事をしゃべり続けていた。
エロ以外ではこんな事もあった。23時頃に走る事が多く、2人で並んで走っていると、パトカーが追い抜いて行き、少し前で止まった。脇を通り過ぎながら車内を見ると無線を持ったお巡りさんが「子供でなく大人でした」と失礼な報告をしていた。
自分も背が低いが、猫ひろしはもっと低い。股下66センチ。この短さで世界の強豪達と戦ったのだからすごい。仮に「股下70センチ以下の部」というクラス分けがあれば、間違いなく金メダルを取れるだろう。
エロ猫も本気でマラソンと向き合うようになり変わっていった。近くでオリンピックを目指す姿を見ていたので、その変化は知っている。記録だけが全ての世界。時にはタイムを出すため、レース中に「ランしょん(尿)」&「ラン糞」をする事もあったが、タイムを縮めていった。
国籍を変え、カンボジアでロンドンオリンピック代表に選ばれた時はIOCが新たなルールを作り、代表は取り消しになる。それでも負けずに走り続け、リオ五輪で代表権を取った。その頃の6年間を追い続けたドキュメント映画『NEKO THE MOVIE』を観ると、当時の様子が赤裸々に描かれている。
気を緩めると涙してしまうので、このDVDを観る時はご注意あれ。元オリンピアンから芸能界入りした人はたくさんいるが、芸能界からオリンピアンになったのは猫ひろしだけではないかな?そこをもっとリスペクトしてあげて欲しい。
猫ひろしも44歳。今後の目標を聞くと「代表を争うのは東京オリンピックで最後かもしれませんが、今後は個人のレースを楽しみ、自己ベスト2時間27分を切りたいです。そして将来はカンボジア陸上チームのサポート、できればコーチとなって選手育成に協力できれば」と熱く語っていた。股下66センチの男の野望はまだ終わっていない。