半世紀前、歌手、女優、モデルとしてテレビの深夜放送、雑誌のグラビア、レコード、銀幕で世の男性を魅了し、わずか１年余りで姿を消した「フラワー・メグ」という時代のアイコンがいた。２０００年代の再評価に伴って活動を再開し、今年２月８日には都内で自身初となるホールコンサート「フラワー・メグ伝説～ララバイ・オブ70's」(代々木上原・けやきホール)を開催予定だ。新年に完全復活を目指すメグが、よろず～ニュースの取材に対し、自身の歩みや昨年の闘病生活を振り返り、公演にかける思いを明かした。(文中敬称略)
東京都目黒区出身。芸名のメグは「目黒」に由来する。「目黒の花(フラワー)」は１９歳の時、東京・赤坂のゴーゴークラブでショーガールとして踊る姿を目撃したＮＥＴ(現テレビ朝日)のディレクターにスカウトされ、１９７１年４月から同局系で始まった深夜番組「２３時ショー」のカバーガールに抜てきされた。同年６月に「ベッドにばかりいるの」で歌手デビュー。女優としては、梅宮辰夫主演の「不良番長 手八丁口八丁」や新藤兼人監督の「鉄輪」、荒木一郎らと共演した「脱出」などの映画で独特の存在感を発揮したが、７２年に２０歳で結婚して引退した。
０３年に、７２年リリースのアルバムを復刻したＣＤが発売されて再評価され、メグも０７年頃から活動を再開。かつては圧倒的だった男性人気も、近年は会場に女性ファンの姿が目立つ。
「テレビでは天地真理さんや南沙織さんなど、さわやかなアイドルが活躍している真逆を歩いていたフラワー・メグでした。私はフラワー・メグにさよならして結婚をし、その後は一切、フラワー・メグに触れることはなく、家庭に入り、３人の子育てをしていました。私の知らないところで当時のレコード『フラワー・メグ ささやき・ためいき・もだえ』がＣＤで発売され、それをきっかけにフラワー・メグを再開しました」
今回のホール公演は昨年８月に予定されていたが、７月に左目の角膜感染症で緊急入院して開催を断念。ホール公演への強い思いを胸に回復し、昨年１１月下旬に「前夜祭」として、都内のライブハウスで、津川雅彦と朝丘雪路の長女で歌手の真由子、バーレスクダンサーのエロチカ・バンブー、音楽デュオの黒色すみれ、ダンサーの史椛穂、ＭＣの女優・佐藤梟らとステージに立って健在をアピールした。
メグは昨年の闘病生活を回顧し、心境を吐露した。
「４月に最愛の母が亡くなり、５月の初めごろから左眼に痛みを感じ、細菌による感染症と診断されました。入院後も充血と混濁が治まらず、点滴と飲み薬と１時間ごとの点眼薬の日々でした。特につらかったのは点滴で、私は血管が細く、点滴の針がなかなか入らず、両腕には注射の跡と青たん(あざ)ができました。感染症はおかげさまで良くなり、混濁は薄くなっていますが、まだ視力は回復していません。今でも２週間に１度通院をしています。それでもあの絶望的なところから元の眼を取り戻す希望が見えてきたところまできました。入院中は毎日窓から空をながめ、ウサギや鳥やワニに見える雲を風が運んでくる光景に、へこんだ心を立て直したりしながら、詩やエッセイを書いたり、そんな貴重な時間になりました。いずれ発表できたらいいなぁと思っています」
１か月後に迫った初のホール公演に思う。「７０年代へのララバイ(子守歌)」がテーマだ。
「『ララバイ・オブ70's』のコピーが、～いかがわしくて、泣きたくなるほど夢にあふれた時代～というのですが、正しくそんなステージにしたいと思っています。あの時代と現代の融合みたいな。あの時代を生きた人にも、そんな時代を知らない若い人たちにも観てほしいですね。前夜祭のゲストに加えて、当時の人にもゲスト出演していただく予定です。歌は色々な歌を歌いますよ、実は始めて歌うのですが、まるで一人芝居みたいな素晴らしい歌を見つけました。今回のステージはこの歌が聴きどころかな…。あと谷川俊太郎さんの詩に私が曲をつけたもの、今年亡くなった朋友・中山ラビさんの歌も歌うつもりです。前夜祭の時も私の歌に涙してくださる人がいらっしゃったり、『音楽ってすごいな』と今さらながら思っています」
２２年の飛躍を誓う。「新年はＹｏｕＴｕｂｅチャンネルを開設して音楽配信をやって、ライブやコンサートをやって、芝居もやって、本も書いて、新曲も制作して、昨年やり残したことを今年は全部やりますよ！」。最初の引退から５０年。集大成の１年となる。
