コロナ禍でニーズが高まった食事形態として「中食(なかしょく)」が挙げられる。惣菜や弁当などを購入し、自宅などに持ち帰って食べることだが、感染症対策で「外食」を避けつつ、家で素材を使って調理する(内食)の時間もない(あるいは苦手な)人にとって、不可欠なライフスタイルとなった。コンビニエンスストアでも中食メニューが多様化していることを受け、流通アナリストの渡辺広明氏がよろず~ニュースの取材に対し、その背景を解説した。
セブン‐イレブンでは5月から茶碗1つ分サイズの弁当を販売。ファミリーマートはこれまでも展開していた「ミニサイズの中食商品」の品揃えを今月14日からさらに拡大した。少量で安価な商品を複数組み合わせ、いろいろな料理を食べ比べたり、補助的なおかずとしても活用する、といった用途がある。
渡辺氏は「コンビニに限らず、フードコートなどでも食が多様化している。昔で言えば、幕の内弁当だが、今のミニサイズ中食商品は、自分の好みのオカズを少しずつ食べたい、さらにデザートもちょっと食べたい~という文化になっている。また、昔は『ながら食べ』でも新聞や雑誌を読みながら、テレビを見ながらだったのが、今はスマホを見ながら食べるので、片手だけで食べられるものが求められる。小さなおにぎりを一口、ファミチキをパクッと…といったように、小分けにした食事が好まれる」と、食の多様化とスマホの影響を指摘した。
記者はセブン‐イレブンで「一膳ごはん 和風カレー」(税別298円、447キロカロリー)と「ショートパスタ たっぷり海老のビスクソース」(税別330円、232キロカロリー)を購入。合計600円台で、熱量は計679キロカロリーということで、普通サイズの弁当や一品料理とそれほど変わらない。腹七分目で完食したが、栄養バランスを考えるならサラダ類をもう一品、ついでにスープ系、おまけにデザートもといった欲求が募り、その通りに買っていたら軽く1000円オーバーになってしまう。
こうした行動形態について、渡辺氏は「デフレ化によって外食が安くなっているため、コンビニでも小分けにすることで一品での単価を安く見せるようになったこと。一個買ったら、もう一個と、いろんな物を買って、買い上げ件数がアップし、客単価もアップする」と指摘。また、同氏は「あるいは、弁当は自宅から職場などに持ってきて、サラダだけコンビニで買うといった『ついで買い』もある」と付け加えた。
一方で、女性の購買層が増えたこと、健康志向、ダイエット志向で性別問わず「食べ過ぎない」意識が高まっていることも背景にあるのだろうか。
渡辺氏は「食が細くなっているとか、ダイエットや健康志向も挙げられるが、やはり、食の多様化やデフレの影響が大きいと思います」と総括した。購買者である記者も、ミニサイズの商品を大量に買って「フルコース」にするよりも、あくまで足りない部分を補う「ワンポイント起用」が定着していくように感じた。