最も身近な「異世界」への入り口 工場夜景を撮影するカメラマン・小林哲朗

ゆきほ ゆきほ

規則正しく並び、揃ってカーブした配管。巨大な煙突から立ちのぼる水蒸気。細かく平行に重なった鉄製の階段。そして、それらを照らす光たち。

工場夜景が本格的なブームになったのは、2011年から毎年開催されている「全国工場夜景サミット」からであると言われている。ブームが定着し、今では大手旅行会社も工場夜景ツアーを提供。人気を博している。

なぜ人は工場に惹かれるのか。工場写真家の小林哲朗さんにお話をきいてみた。

――工場とカメラ、どちらを先に好きになったんですか?

小林:カメラです。元々機械が好きで、子供の頃から家電を分解して遊んでました(笑)。携帯にカメラ機能が付くようになって段々ハマって、コンデジを買って本格的にのめり込んでいきました。

――最初の主な被写体は何だったんですか?

小林:最初は廃墟でした。でも1年くらいで行き尽くしてしまって。写真家となると廃墟は撮影許可などが大変なので、今はもう撮影していません。工場は敷地外に撮影制限が無いのも、ハマりやすいポイントだと思います。敷地外といえど、ポイント次第ではめちゃくちゃ近づけるので、工場ど真ん中に居るかのような写真も撮影できるんですよ。

――工場の他にも、地下空間や電線も撮影されていますよね。共通する魅力がある気がしますが…。

小林:デザインや演出の無い、無駄をとことん削ぎ落した機能美であるという点ですね。あと、あと近づくと単純にめちゃくちゃデカイ工場とかだとワクワクしてしまいます(笑)。

――イチオシの場所って、どこですか?

小林:あちこちあるのですが…石油コンビナートや製鉄所、セメント、化学など、「みんな違ってみんな良い」という感じですね。壮大さでいうと、山口県の周南市はすごいです!色々な種類の工場が複合しているので、とてつもない広さなんですよ。新幹線の駅が近いのでアクセスも良く、知名度も高いです。

――昼間とは違う、夜だけの工場の魅力って、何でしょうか?

小林:幻想感が増すところですね。SF感というか、よく言われているのが、身近にある異世界です。元々ファイナルファンタジー7の近未来的な工場や、AKIRAの荒廃した世界観に憧れていたので、工場夜景にも通じるものがあるのかもしれません。

――撮影ツアーも主催してらっしゃいますが…カメラ素人が1人で行っても大丈夫なんで
しょうか…?

小林:もちろん!スマホのみの方でも楽しめるよう、望遠レンズと15インチのモニターを繋げ、現場で撮影していただけるようにご用意もしてます。マニアだけでなく、一般の方にも気軽に参加していただきたいです!

――スマホでも大丈夫なんですね!ありがたい…!

小林:この秋は、私の地元でもある尼崎の工場ツアーと、四日市の工場ツアー。あと、10月には北海道の室蘭市で工場ツアーに加え綺麗に撮影する方法などをレクチャーする講座も開催します。

◇ ◇ ◇

戦後の高度経済成長により、大気汚染や水質汚濁など公害が日本各地で問題になった。学校の授業でも、昭和の子供たちは繰り返し環境汚染について学んだはずだ。「工場=体に悪い」というイメージだったものが、法律の整備や企業努力により、美しい観光スポットへと変貌を遂げたのだ。今年は各地の花火大会が中止になってしまったが、代わりに地上の星空”工場夜景”へ、異世界旅行へ出かけるのはいかがだろうか。

小林哲朗ホームページ:https://www.kobateck.com/
Twitterアカウント:https://twitter.com/kobateck?s=20
工場夜景のスペシャリスト“小林哲朗”と撮る SKYBUS®×尼崎工場夜景ツアー:https://www.limonbus.com/tabitabi/hyogo/tourism/2137/

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