「さあ今1700億円がサイレントもも上げだ!」18万人魅了したRTA実況たぐちアナ ”遊びだからこそ全力”

松田 和城 松田 和城

 これが真の“eSports”だ。8月11日から15日にかけて開催された、オンラインイベント「RTA(リアルタイムアタック) in Japan Online2021」。体を鍛えられる任天堂の人気ゲーム「リングフィットアドベンチャー」RTAがフィナーレを飾った。実況を担当した、元テレビ東京で現在はフリーとして活動する田口尚平アナウンサー(30)は、放送後に自身もトレンド入りを果たすほど注目を集めた。約18万人の同時接続視聴者数を記録し、イベント史上過去最高の盛り上がりを見せた要因と手応え、そして彼がこだわり抜いた点とは。田口アナに話を聞いた。

 RTAとはゲームをどれだけ速くクリアできるかを競う遊び方。「リングフィットアドベンチャー」の中でも様々なRTAが存在するが、今回は同作のワールド1を負荷30で最速クリアを目指す。16分53秒という世界記録を持つえぬわた選手は、リングを両手に持ちその鍛え抜かれた身体でスクワットなどを行い記録更新を目指した。

 「宝石界で一番硬いとされているのはダイヤモンドでありますが、RTA界で一番硬いのは間違いなくこのえぬわた(の肉体)でございましょう!そのダイヤモンド1グラム当たりの価格は250万円というところですから68キロ換算で1700億円ということになります!さあ今1700億円がサイレントもも上げだ!」。田口アナのテンポ良く流れていく実況が、視聴者の心を掴んで逃さない。「遊びだからこそ全力でやらせて頂きました。当日の朝にちゃんと価格チャートを調べましたね。日によって値段が変わってしまうので。そのくらいこだわり抜きました」と明かした。

実況で意識したことがあるといい「昔のプロレス実況のように、その試合を代表するようなパワーワードを残そうと考えていましたね。古舘伊知郎さんリスペクトで記憶に残るような実況を心がけました。コメント欄で何人かの方に気づかれてうれしかったですね」と振り返った。

 同イベントは基本、RTAに挑戦する“走者”がゲームプレイと同時に実況を行うのだが、全力で運動をするリングフィットアドベンチャーRTAでは、走者が話せないため代わりに田口が実況を務めた。えぬわた氏とは仕事で知り合った友人だったといい、「以前、同じゲームで28時間22分12秒の記録を出した『運動負荷を最大にして全ステージをクリアする』RTA挑戦の際も実況して欲しいと言われていたんですね。ただ、仕事の折り合いがつかなくて2回ほど、叶わなかったんです。なので今回、お話をいただいてから公式のお仕事を入れないようにしました」と話した。

 2016年から年2回で開催されてきたイベントの歴代最高視聴者数は6万人だったが、その数を大幅に超え、約3倍となる18万人もの視聴者が集まった。その要因はコロナ禍の影響もあるが、もう一つは“視聴者参加型“だったということだ。「当日の昼頃に、配信中に流す予定だったえぬわたさんを応援するメッセージをツイッターで募集したんです。そしたらそのツイートが8000リツイートもされて。220もの言葉が集まりましたね」。220件の中から選ばれ、放送されたコメントのうちの一つ「(筋肉すごすぎて)ワクチンの針通らないだろ!」もトレンド入りを果たし、ネット上で一体感が生まれた。

 個人的ベスト実況を問うと、田口アナはしばらく考える様子を見せた。口にしたのは、えぬわた氏が17分0秒という記録瞬間だった。「印象に残っているのは素の実況ですかね。競技終盤の『ライフはもうほとんどありません。しかし!しかし筋肉はまだある!」のところなんですけど、手元に用意してる資料関係なく、見たまんまのことを言っている。こういう実況が一番伝わりやすいのかなと思いました』とうなずいていた。

 放送後、自身が通っているパーソナルジムのトレーナーにも配信の感想を伝えられるなど、反響の大きさを感じた。「今回、自由にやらせて頂いた中で、一個の“たぐちアナ”の形として認めてもらえた気がします。こっちが楽しいことを全力でやってると、それをみんなも楽しんでくれるんだなって確認できたことが、最大の収穫でした」と手応えを見せた。

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